政治の世界を垣間見る
秋になった。
私の狭い部屋に大学院の聴講生だった人が遊びにきた。
夏休みの間、海外をまわっていたという。そこで見聞してきた話をたくさん聞かせてもらった。
彼は京都の出身で、大学を出てから上京してきた。そこで今の大学の先生の学問や思想に惹かれて勉強を続けていた。
ただ学生の身分だったわけではなく、社会人として働いているわけでもなく、よく分からない雰囲気をもった人だ。
一通りの話が終わった後に、彼が「せっかく東京にいるのだから政治の中枢を見てみたいと思いませんか」と私に言った。
私はあまりこだわりなく色んなものに興味があったので、どんな話か聞きたかった。
彼は当時の政権政党(要するに自民党)の学生部に所属していて、色んな活動をしていて、そこでの話をし始めた。
私をそこに参加させたいということで私のところに直談判しにきたのだ(おそらくメンバーが少ないので増やしたかったのかもしれないが)。
基本的に学業の妨げになるわけでもなく、重い義務があったわけでもなかったので、私は彼と共にその世界をのぞいてみることに決めた。
当時はすでに学生は政治的には無関心になっていて、学生で政治の世界に首を突っ込むなどということは少し変わった奴というレッテルをはられかねない風潮だった(今もそうかもしれない)。
私自身はその政党を支持していたわけではなかったのだが(それは彼も同じだった)、政治の世界を垣間見るチャンスであることは確かなことだ。
この選択は正しくて、それからは本当に貴重な経験をした。
色んな人物に出会うことができた。
テレビでしか見たことのなかった政治家の方にこんなにも身近に接することのできる機会があるとは思いもよらなかったが、東京では自分さえその気になれば、どんな人にも会うことができるのである。
私の学生生活は俄然忙しくなってきた。
自分が出会う全てのものから、あらゆることを学び尽くす。
どんなことにも偏見をもたずにやってみる。
とにかく行動し、行動しながら考える。
私の中でいつも考えていた理論的な思想世界と生身の人間の生きる現実世界が様々な形で交錯し私の人生に新しい道を開きつつあった。その意味では書物を持って街に出ることが必要なのだろう。
私は政治家を志したことはないが、広く社会に目を向けて、自分が学び考えてきたことを現実社会でいかに具体化し実現していくか、という大切な視点を得た。
政治の世界はそれを私に教えてくれたのである。
Share this content:
コメントを残す