大学で初めての試験

それは前期末試験だった。その試験が終了するとまたしばらく長い休みに入る。試験前は図書館もごった返していた。自習スペースがいっぱいになるのは、年に2回の試験の時だけだ。授業に出ている者からノートを借りてきてコピーするものが多く、生協のコピー機の前には多くの学生が列をなしている。
まさに単位を取るためだけの作業の数々。何の学びもない空虚な作業。
この時期だけは大学もにぎわっている。試験のためのだけに大学に来る輩が突然増えるわけだから。
この試験ですでに成績が悪く単位を落とすものも出てきた。まだ入学して半年だ。この体たらくはもはや高等教育機関だとか、最高学府だとか、そんな言葉で表現できるものではなかった。
そして、この前期末試験が終わると、図書館はもぬけの殻になってしまった。試験が終わった数日後、Nと一緒に図書館に行ったが、誰もいなかった(本当に一人もいなかった)のでびっくりしたことがある。
しかし、私は逆にますますやる気になってきた。こんなあまりにも普通の大学生と一緒になってたまるか、と思った。この頃景気は非常によかった。大学生は何も勉強しなくても十分に就職にありつけたのだ。
これは大学生が勉強しない一番の理由だったかもしれないし、軽薄短小などがもてはやされ、努力、忍耐、根性なんて言葉が笑い飛ばされていた時代だった。大学はプレイグラウンド。まさにそんな風潮の中の大学で真摯な探求心なんて発見するのも難しい。
しかし、私は自分なりに勉強していてもまだまだ確信が持てないでいた。
こんな過ごし方は実は自分が間違っているのだろうか、と。
この頃はしかし「学生時代に何をすべきか」などという啓発本をたくさん読んで自分を勇気づけた。
そしてなによりNの存在。お互いに自分の気持ちを自由に語り合い励ましあって勉強や読書を続ける日々を送った。
「青春をどう生きるか―いまやらなくて、いつやれる」 (1981年)
もはや古典的な本かもしれないが、当時、加藤諦三氏の本は自分を励ますために必要なものだった。最近の学生はこのような本はもう読まなくなったのだろうけれど。
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