「日本型組織の病を考える」 村木厚子

「日本型組織の病を考える」 村木厚子


日本型組織の病を考える

著者は厚生労働省の事務次官まで務めた、公務員の世界では出世頭である。局長時代には大阪地検特捜部によって逮捕され、裁判の末に無罪を勝ち取った人で、当時この事件はニュースでも頻繁に取り上げられていたことを記憶している。特捜部の捜査の仕方や取り調べの方法、調書の作成に関して、大きな問題があることが露呈したのである。

日本の組織は多かれ少なかれ、構造的な問題を抱えているし、その構造に逆らえずに不正や隠ぺいをしてしまう公務員の姿が明らかになった。その問題点はこの著書で「間違いを認めない」「プライドが高い」「組織が閉鎖的で同質性が強い」などと分析されている。これは公務員に限らず、大きな組織には比較的当てはまる問題だと思う。

昨今では財務省や厚生労働省など、もはやおかしいと思いながらも誰も内部ではそれを改善も修正もできない(財政破綻の嘘やコロナの対応など)。そのために国民生活に大きな支障をきたしている。これについてはまた、別のところで述べたい。

この本の題名にあるような「日本型組織の病」についてはそれほど詳細に分析されているわけではないが、著者が逮捕された時の地検の特捜部の体たらくは、同じ人間として見ても開いた口が塞がらない内容であり、検察の信頼を疑いたくなるようなものである。それを読むと、この時の地検の特捜部は日本の組織の問題点を象徴的に増幅された形で見せてくれていると思う。

私はこの本では、日本型の組織の病という内容よりも、後半に書かれている、著者の公務員としてのキャリアの積み上げや経歴に興味をもった。公務員を希望している女性にとっては参考になるロールモデルを提供しているように思う。結婚し、子供を育て、キャリアを全うしているからである。

また、自分の後輩となる公務員に対してもアドバイスを述べている。まず、国民のニーズをとらえる「感性」。次にそれを企画に落とし込む「企画力」。そして、それを国民にきちんと伝える「説明力」である。しかし、これは民間企業に勤める人間にとっても必要な能力であると思える。学生時代にはこのような三つの力をつけて、就活に臨むといいのではないだろうか。特に公務員希望の学生たちには参考になるだろう。

私も、自分の教え子には公務員になった人間が多くいる。彼らを見ていると、やはり社会のためや地域のために働きたいという、いたって真面目な目的意識ややりがい意識をもっている。世間で批判されるような公務員像からは程遠い、まじめで真摯な公務員なのである。しかし、組織の要請やその力学のために、初心を忘れてしまった仕事の仕方をしているかもしれない。そのような教え子たちにも、この本を読んで、脚下照顧して欲しいものである。

公務員のキャリアを終わった後も、それを活かして社会のために自分ができることを着々と実行していく著者の姿勢には心から敬意を表したいと思う。後輩公務員が学ぶところの多い人だと思える。

ただ、この本で指摘されている組織の病理は、いまだに多くの日本の組織が抱えているものであり、国の省庁もいまだに変わってはいないのではないだろうか。特にコロナ禍で露呈した日本の組織や政府と省庁、そして様々な利権団体の在り方は、まだ日本型組織の短所が何ら変わらずに残り続けていることを示しているだろう。

これから公務員になったり、大企業で責任のある立場に立ったりしていく若者たちに、様々な矛盾や軋轢や利害対立の中でも、公益や国益、そして正しいものは何かを求め続けていく姿勢を忘れないで欲しい。

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投稿者:

山道 清和

日本の未来への発展と繁栄のために、日本の学生には自分から学び、考え、自分の意見を持つことのできる人材になって欲しいと心から願っています。就職や公務員試験に関する相談も受け付けています。遠慮なくどうぞ。

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