通常の授業がゼミ?
学生時代をいかに生きるか ―専門学校教師編―その4
この専門学校の授業のやり方は独特であった。学生の座席はグループを組むような形の座席が通常の形態であり、学生同士が話し合ったり教え合ったりしながら授業を進めていくのである。
最初にこの授業のやり方を知った時は、なるほど、と感心したものである。また確かに効果的なやり方であるとも思った。
大学では、ゼミ形式の授業があるが、通常は比較的おおきな教室での大勢の学生での一斉授業が行われる。ゼミはむしろ授業の中の一部でしかないが、この専門学校では日常がゼミ活動なのである。クラスの人数は非常に多いのだが、小さなグループがいくつもできているので、ミクロな形での教え合いが可能になる。
私は講義などで教える授業を当然のこととして学生時代を過ごしたので、このやり方は新鮮な感じがした。
もしも大学で、日常的にこのような授業が可能になったら、大学もさぞ楽しい場になるだろうと思ったものである。
ただ、クラスの担任としてはそれなりに大変でもある。学生が同じ目標に向かって同じ方向を向いているからこそ、このグループ学習は機能するので、やる気のない学生がいたり、学習のモチベーションの差や学力差があり過ぎたりすると、うまく機能しない。場合によっては雑談の時間になってしまう。また、学生間の人間関係が悪くなると、学習は協力して行われるどころか、モチベーションを下げることにもつながる。
その意味で、担任のクラスの運営力が非常に高いレベルで要求される授業形態なのである。
ただ、学生同士が協力し、お互いに切磋琢磨できるという意味では、うまく機能すれば、大学での授業とは比べ物にならないくらいの効果を発揮するだろう。
実際にクラスに入ってみて、その責任の重さをひしひしと感じたものであった。また学生たちをモチベートする力や、厳しく戒めることのできる強さ、学生とも良好な関係を作り、クラスの場の空気を作り出す力も要求されることになる。
これは、私にとっては、かなりチャレンジングな仕事になった。このことの困難さは、実際にこの後に正担任になって一人でクラスを運営するようになってから、非常な重荷となって私に襲いかかってきた。
基本的には、クラスで起こるあらゆる物事が、担任としての責任領域になる。入職したばかりの私にとっては、単に勉強して、学力をつけることでは到底カバーできない大きな能力が必要となったと言えるのである。
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