読書の効用
食費と同じくらいの金額を、本を買うことに使っていた。
そんなことをいうと今も昔も少し驚かれる。
私は大学の4年間で千冊以上の本を読もうと決めていた。
私の三畳一間の部屋には次々に本が積み重ねられ、窓はふさがり地震がきたら本の下敷きになるかもしれなかった。

しかし、読書で得たものは大きい。それでも読書で何を得たのかと言われたら、明確には答えられない。というよりも大きすぎて定義できない。
昔の人や、自分がとても出会えない人と会話をしているようなものだし、自分ができない経験を、読書を通じて疑似体験できる。知識が増えるし、見識(ものの見方や考え方)が多様化する。あるいは統合される。思想が深まり、人生観が成熟する。他人の生き方や考え方、経験を共有できる。
このようなものを学ぶことができる最も安価な方法かもしれない。
人間の経験するあらゆるものを学びたいという気持ちがあったが、自分の生活空間には物理的な限界がある。読書によってその時空の限界を破ることができるのだ。
活字離れが問題視されるが、私の学生時代にもさほど本を読んでいる人は多くはなかった。時々噂を聞きつけて、私の部屋を訪ねてくれた同級生たちは本に埋もれた私の部屋を見て、一体どんな感想を持ったのだろうか?
しかし、学生時代に(もちろん大人になってからも)本を読まないなんて、なんともったいないことだろうか。
本をたくさん読むことの効用がもっと大学で見直されたらいいのに、と思わずにはいられない。
Share this content:
コメントを残す