自分にこだわり続ける
ソクラテスの言葉に「汝自身を知れ」というものがある。
私はこの言葉こそが、哲学の原点だし、人生論の原点だと思っている。
自分のことは自分がよく知っている、ともいえるし、一番知らない、ともいえるのかもしれない。
自分の生き方や考え方や価値観に囚われて、他から学ばないことや自分を客観視できないことは問題だ。
しかし、だからとて自分へのこだわりを捨ててはいけない。自分にとことんこだわり続けることが、実は自分の世界を広げることであり、また自分を深めることが、全人類への理解へもつながっているのである。
自分へのこだわりは、自分を生み出した両親や、自分に影響を与えた様々なものに対する考察につながる。自分のルーツを知ろうとすれば、この日本という国の歴史や、伝統などに対する理解も必要になる。
自分に徹底的にこだわることが、実は自分以外の様々な物事に目を向けるきっかけになる。
自分のもっている価値観や思想、行動様式などは、決して自分だけで形作ってきたものではあるまい。
数多くのものを織り込んで初めて自分が成り立っており、そこにこそ自分のオリジナリティが生み出されていることを知るだろう。
無限ともいえる網の目の中に自分は存在して、同時に多くの人や物事に影響を与えている存在であることもわかるだろう。
自分を離れて自分の理想はない。
自分を離れて自分の未来はない。
自分を離れて自分の使命はない。
自分を離れては愛を語ることもできない。
自分に徹底的にこだわり抜いてこそ見えてくる世界があり、それが不思議なことに多くの人と共有でき、共感できる世界につながっていることを信じよう。
個に宿る普遍をつかむには、徹底的にその個にこだわり抜くことが必要なのである。
Share this content:
コメントを残す