滑落
これまでの人生は大きな失敗をすることなくここまでやってきた。
もちろん小さな失敗はたくさんあったが、大きな転機ではそこそこの結果でここまで生きてきた(恋愛を除く)。
高校受験、大学受験、大学院修士課程入試。
振り返ってみても大きな失敗はなかった。その意味で私はこれまで他の人から見たら、順調な人生を歩んできた。
非常に高い結果ではないのだが、別に悪い結果でもない。そんな状態だ。
しかし、この最後の段階で私はこれまでの路線から滑落することになってしまった。
大学院博士課程の入試の合格発表に私の名前はなかった。なぜか「やっぱり」という気持ちのほうが強かった。
このときに初めて、私は先のない不安を知った。そして今までの自分の人生をある意味で、反省させられることになった。
幸いに世の中の景気は非常に良かったし、その気になればどんな仕事でもできた。フリーターなどはたくさんいて、東京ではそんな存在は珍しくも恥ずかしくもない。
食べていくことに困ることはないのだが、しかし。
自分の人生のレールが突然消えてしまったのだ。
私はこの失敗の意味を考えようとした。この出来事は私にどんなメッセージをもたらそうとしているのか。この失敗はどんな意味があるのか。
おそらく試験の失敗は具体的な理由があった。語学の点数?面接内容?しかし私にとっては悔いのない努力はしたつもりだった。だからそんな原因分析はもはや意味はない。
もう一年大学院の博士課程合格のために勉強を続けるという選択肢は私の心の中から消え去っていた。
もはや大学に残ることの中に私の使命はない。なぜかこの時の私の判断は早かった。大きな進路の転換が求められているのだと。
このとき私はこの失敗の意味をそのように受け止めたのである。
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