栗本教授の授業
大学院の授業は、つまらないものもあったが、自分の専門の授業はとても楽しかった。
私の指導教授(栗本慎一郎教授)は時々テレビに出てはニュースについてコメントしたり、「朝まで生テレビ」などにも時々出演して意見を述べたりしている人だった。
非常にカバーしている分野が広く、マスコミの世界にも精通していて、色んな話を聞くことができた。
大学にこのような先生がいてくれたことが、私にとっては大きな救いだった。
ただ現実的にはやはり重箱の隅をつつくような研究をしなければ、大学では認めてもらえないようで、教授はいつもそれを危惧していたようだ。
教授の周りに集まってくる学生たちが、きちんとした基礎研究をやらずに、マスコミで流れているような浮薄な情報に流され、批評家のようになっていくことは必ずしも好ましくはないだろうと思う。
分析や批評は得意でも、自分では何一つ行動できない人間がたくさん育ってしまう危険性もあるわけである(もちろん分析や批評もひとつの仕事にはなりうるのだが)。
私は栗本教授から大きな世界観を教わったと思う。様々な分野を横断する視点やより根源的なものを求める姿勢。
多様なものの見方や考え方、いろいろな分野に流れる共通の価値観。
学問が自分の人生とは決して別ではない、別であってはならないと感じたのはこの頃だったと思う。
結局、私にとっては学問は自分の人生観や世界観を磨くための手段だったのだ。
そのような意味では、学位にこだわってもいなかったし、本当は大学に残ってまで勉強を続ける必要はなかったのかもしれない。
私にとっての学問の本質は「より良い生き方」の探求なのである。そのために、自分を知り、他人を知り、社会や世界を知ることが必要であり、私にとっては、学問はそのために必要な武器だったのだと思う。
私は一生、様々な分野の勉強を続けようと決心した。
学び続けることが、自分の成長や幸せのためには不可欠なのだ。
教授の授業を受けるたびにそんな気持ちが強くなった。
その意味では、私にとって、東京という空間はまさにうってつけの場所だったのだろう。
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