東京での生活に思いを馳せる
教授は一時間ほど話をすると、夕方から打ち合わせがあるからということで場所を移動された。
「今度本を出す予定の共同執筆者との打ち合わせがあるから君もちょっとついてきなさい。」私は思いがけない教授の誘いに驚いた。
教授はわざわざ遠くから東京に出てきた私を、一時間の話で帰してしまうのは気の毒だと思われたのかもしれない。
新宿からはタクシーで移動。東京の風景はどこを見ても新鮮で、大学を卒業したら必ず上京しようと心に決めた(慣れてしまえば何ということもない世界ではあるのだが)。

教授の打ち合わせの場所は、地下鉄の駅の近くの静かなバーだった。
教授と私がその店に入ると、すでに共著を書くことになっている学者の方が待っていた。
教授は私を「今度大学院に進学する予定の学生で今日九州から出てきたんだ」といってその人に紹介された。
教授はさすがに私の前ではその学者さんと執筆内容の話はせずに、しばらく雑談をされていた。
私は飲み物を一杯だけ飲んだら、帰るつもりだった。
仕事の邪魔はしたくなかったし、このような場所にあえて私をつれてきてくれた教授の心遣いが本当によくわかったからだ。
もっと長時間そこにいてそこでの話を聞いていたかったが、外が暗くなり始めた頃に教授にお礼をいってその店を後にした。
地下鉄に乗って、どうにかこうにか友人のうちにたどり着いた。
今後の自分の人生について色んなことを考えた。
今後自分の人生はどのような方向に流れていこうとしているのか。
ただ、今度の春には自分は確実にこの東京に住んでいることだろう。
どのような形であれ、それだけは確かなことのように思われた。
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