日本を知る旅へ
数年前のことになるが、私が模擬面接をやった学生の中で、学生時代の休みを利用して日本の全ての都道府県を旅行した学生がいた。
日本を知る旅だ。
もちろん旅行したからとて、それぞれの地域の抱える問題や歴史やその地域性を知ることなど十分にはできないだろう。
しかし、その学生には、自分は日本に生まれたのだから、まず日本を知りたいという願望があった。なかなか面白い学生だと思った。
学生時代に海外経験はあった方がいいだろう。外から日本を見る目が養われる。
しかし、それ以前に私たちは、日本について一体どれだけのことを知っているだろうか?
日本の全ての県や地域を訪れたことがある人間はどれくらいいるのだろうか?
否、自分の生まれた地域ですら、実はよく知らないのではないか?
例えば、私は長崎県の大村市というところに生まれたが、その自分の生まれた地域の歴史を知ったのは大人になってからだった。
大村市というところは、戦国時代から安土桃山時代にかけても日本で初めてのキリシタン大名が出た藩だった。大村純忠である。その大村純忠がなくなった終焉の地が私の実家から数百メートルの場所にあった。またキリスト教などの弾圧で大村藩の多くの住民が処刑されている。そのような事実も子供のころは知らなかった。
また、幕末から明治にかけて倒幕に参加した藩でもあり、坂本龍馬などと連携し、明治維新に協力した人物が大村藩からは数多く出ている。そのようなことも高校の時ですら全く知らなかった。
日本の義務教育の中に郷土史を必須とすべきと考えたのはその時だ。
自分の生まれた自治体、住んでいる自治体、そして日本に数多くある自治体はすべて同じ日本国の中にあるが、知らないことだらけである。
そんな人間が、海外に行って、ちょっと海外のことを知ったからとて、それがそれほど価値のあることだろうか。
まずは、日本の学生は日本のことをもっと知るべきである。別に旅行をしろとは言わないが、日本の歴史も一度教科書を離れて、様々な見地から学びなおしてほしいと思う。
またそれぞれの地域に、それぞれの歴史があり、多くの日本人がそこでの暮らしを重ねてきた姿をもっと知って欲しい。
まずは自分の足元から。地元のこと、住んでいる場所のこと。興味のある日本の地方や地域。
円安の昨今、日本の中をもっと訪ね、もっと巡って、日本を知る旅を。
学生時代には是非実行して欲しいものである。
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