新入生歓迎
新しい学年が始まると、サークルの勧誘が始まる。
新しい1年生が入学し、サークルを探す。
チラシを撒き、声をかけ、多くの部員の獲得を目指す。
春はいつも新鮮だ。先輩たちの声がキャンパスに響く。
私が属していた「ショパンの会」「コミュニケーション研究会」も他のサークルと同様に勧誘を開始した。
「ショパンの会」は教育学部の学生が多く参加してくれて、部員の獲得にはあまり困らなかった。やはり女の子が多かった。みんな音楽が好きで、ピアノが好きな連中だ。
問題なのは「コミュニケーション研究会」の方であり、なにせ名称からして何をやっているのかよくわからない。得体の知れないサークルだ。私たちも自分のサークルながら活動の趣旨を説明するのに苦労した。ほとんど人が集まらない。ミニコミ誌の発行なんて、興味をもつ学生がいるのだろうか。
ちなみにそのミニコミ誌の名前は「飛遊人」。いかにも当時の大学生の軽薄さを表した名称だ。おそらく私の考えには最もそぐわない名称だったことは間違いない。ただ、先輩たちから引き継いだ手前、名称は変更できない。
生協の掲示板に張り紙をしたが、反応がない。
しばらくはまた自分たちだけでやらなければならないかな。
新入生がたくさん入学してきているのに、誰一人入会してくれないのは本当に寂しい。
こうなったら他の大学、短大に勧誘の手を広げ、コミュニケーション研究会をこの大学の枠を超えたサークルにしよう。
この考えは結果的に私たちの活動範囲や人間関係を非常に広いものにした。わずか数名で引き継いだ「コミュニケーション研究会」は一年後には50名を超えるメンバーを抱えるほどになった。
人間関係が広がっていく過程においては、様々なドラマが生まれる。私たちはその数多くのドラマの中で多くのことを学んだ。自分について考え、他人について考え、人の感情や行動や考え方。
学生ならではの学びかもしれなかった。
Share this content:
コメントを残す