完全担任制という試練
学生時代をいかに生きるか ―専門学校教師編―その6
東京法律専門学校では、クラス担任というのもまた独特だった。完全担任制が敷かれていて、クラスの学生に教える先生は基本的に一人が原則だった(当時)。希に、管理職の先生には副担任がついたりしていたが、基本的には学生に必要な教科を、一人の先生が全て教えるのである。
これがどれだけ、普通でないかは、特に公務員試験を目的とするクラスでは如実である。公務員試験は課される科目数が非常に多い。教養科目は数的処理関連の数学的なものから社会科学や人文科学、自然科学に至るまで幅が広い。また専門科目に至っては、法律(憲法、民法、行政法など)から経済学(マクロ経済学、ミクロ経済学、経済政策など)そして政治学、社会学、行政学などがある。
これらもすべてカリキュラムには含まれており、これを一人で教えることの大変さは想像に難くないだろう。
私も1月からは、正担任になったので、全ての科目を自分一人で教えることになった。大学はもちろん公務員の予備校や資格の学校でも、これらの科目の担当の講師はそれぞれに専門的であり、全ての科目を一人で教えることはない。だからこのやり方は、ある意味ではとんでもないやり方なのである。
しかし、これが資格試験というレベルであれば、十分に可能なことは、やってみてよくわかったし、これによって私の知識や教養はかなり磨かれたと思う。
何より、学生たちの成績や進路、最後の就職活動まで、担任が責任をもってフォローするというのは重責ではあるが、責任感や教師の当事者意識を喚起する上では秀逸なやり方である。
クラスで起こる様々な問題も、課題も、学生の進路も一身に引き受けるということの困難さや大変さによって、私の仕事能力は著しく高められたと思う。
学生との距離も非常に近く、学生の個性にストレートにぶつかっていかなければならない難しさと同時に、そうであるがゆえに得られる様々な学びは、私の人間としての幅をも大きく広げてくれたものと思う。
それゆえに、授業や学生指導、クラス運営などを含めて毎日が忙しく、一日はあっという間に終わってしまう。終わったころにはヘトヘトになる毎日であったが、人間は多少の大変な環境でも慣れてしまうものだ。
こうして、結局は授業時間の長い特別クラス(授業は9時30分から19時まで)の担任をほぼ16年続けることになったのである。
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