学生との面談

学生との面談


学生時代をいかに生きるか ―専門学校教師編―その23

専門学校の講師になってから、学生たちと個別に話す面談の機会が非常に多くあった。大勢の学生たちを一つのまとまりとして考える場合もあるが、学生一人一人と向き合う機会が多いことも、この専門学校の特徴と言えただろう。

学生たちは実に様々な理由で専門学校に進学してくる。高校時代に全く勉強していなかったので、専門学校しか行くところがなかった学生。高校のころから公務員になりたいという固い決意を持っていて、大学に行くよりも専門学校に行く方が公務員になる近道だと考えて専門学校に来た学生。大学には行ったけれど、うまく就職できず、またそこでは公務員になれずに大学を卒業してから専門学校に来た学生。一度社会に出て働いていたが、公務員になりたくて合格できそうな場所として専門学校を選んできた学生。

このような多くの事情と背景を抱えた学生たちを、一人でも多く目標達成に導かなければならないわけであるから、真剣に取り組めば、困難だらけで責任重大な仕事である。私は講師になった当初はあまり深刻に考えてはいなかったが(やはり科目や勉強を教えるという形の考え方をしていた)、このような様々な学生の背景や動機を知って、担任の抱える責任の重さを痛感したのだった。

授業の合間を見ての面談をしていると、学生の目標やいま抱えている悩みや問題が見えてくる。クラスや授業の在り方をこれにすべてを合わせることは難しいが、可能な限りその不安を解消しながらクラスの運営を進めなければならない。

ただ、学生と個々に面談をしていると、私の考えや人間性も理解してもらえるので、面談の時間は学生に対して信頼関係を作っていく重要な時間であった。学生にはずいぶん厳しい要求をすることもあったし、妥協しないで難しいハードルを設定することもあったが、それが可能だったのは面談によって、話しやすく、相談しやすい関係を作っていたからだと思う。

面談の中では数々のクラス内での問題も知ることができた。学生は子供ではないとは言え、やはり人間だ。好き嫌いもあれば合わない人間もいる。またゼミ学習という学生が協力しながら学習を進めていくシステムの中では、学生間の人間関係が協力的で友好的である必要もあった。そのような意味でも担任の役割は決して小さくはなかったのである。

このようなことも含めて、この学校での担任業務を真剣に取り組んでいけば、担任は人間的にも随分と鍛えられ、磨かれるのだと思う。学生個々人から受ける影響もあったし、学生間をうまくマネジメントする経験もできた。またクラスを集団として力あるものにするための様々なスキルも身につけることができる。

私はこの専門学校に16年ほど勤めたけれども、本当に多くの経験と出会いを受け取った。その原点は、学生との1対1の面談だったことは間違いのないことだ。人間として1対1で向き合うことの重要性や難しさをいつも感じていた。

50人以上もいる学生たちの一人一人と面談を続けることは、時間と労力を要したが、これによって得られたものはとても大きかった。この専門学校で最も多くを学んだのは、学生たちではなく、ほかならぬ担任である私自身だったのである。

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投稿者:

山道 清和

日本の未来への発展と繁栄のために、日本の学生には自分から学び、考え、自分の意見を持つことのできる人材になって欲しいと心から願っています。就職や公務員試験に関する相談も受け付けています。遠慮なくどうぞ。

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