好きな人ができた
彼女からの相談で私は目の前が真っ暗になった。
「好きな人ができた」これが彼女の私に対する相談だった。もちろん「好きな人」は私ではない。
私の気持ちを知っている彼女が、このような相談を私に対してしてきたことを責めることができない理由があった。
私はいつも彼女に「どんなことでも力になるから遠慮なく相談してほしい」と言い続けていたからだった。
彼女はその言葉に素直に従ったに過ぎない。しかし、その素直さが恨めしかった。無垢な行動は時に人を傷つけるものなのだ。
当然ながら、彼女の悩みが解消され、好きな人と結ばれることになれば、それは彼女が私のもとを去っていくことを意味していた。
自分の気持ちと矛盾する行動を「彼女」のためにとることができるのか、まさしく私は試されていた。
私の心は弱く、嫉妬や彼女を責める気持ちで大きく揺れ動いていた。彼女が好きになったその男性は同じサークルの私と同学年の同輩だった(ただ本人はとてもやさしく口数もすくなく落ち着いた、いい奴だった)。
どうしようもない失意と絶望のなかで、それでも平静を装って彼女の相談に乗らなければならない苦しみに身を焦がす思いがした。
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