女子学生に泣いて訴えられた話

女子学生に泣いて訴えられた話


学生時代をいかに生きるか ―専門学校教師編―その10

毎週月曜日に行われているテスト(答練と呼んでいた)が終わると、学生同士で採点をさせ、こちらで確認をしてから学生に返すことにしていた。もちろん成績をつける際の基準にもなるので、点数などは名簿に記載して、クラスの平均点なども報告を行う。

担任をもってから2か月ほどした月曜日に、いつものように答練が終わり、昼休みになった。昼休みも点数の入力作業などを行いながらで、完全に休んでいるわけではない。また昼休みになると午前で早退する学生が教務室にやってくる。

その日、クラスのある女子学生が、早退したいと言ってきた。理由を聞くと急に泣き出して次のように訴えてきたのである。

「この一週間は答練の点数をあげるために頑張って勉強した。昨日も夜遅くまで頑張った。でも大した点数が取れなかった(確か50点くらいだった)。あれだけ頑張ったのにと思うと悔しさや自分のふがいなさで、今日はとても勉強する気になれない。」

このように泣きながら言うので、さすがの私も困ったのだが、ある意味でそれだけ答練を重視して懸命に取り組む気持ちがあることに大いに感心もしたのである。その学生は確かに普段の振る舞いからして負けず嫌いの学生ではあった。

教務室の前で、学生や他の先生が通る場所で泣いているので、まるで私が泣かしたかのような印象を持たれてしまったようだ。女子学生の感情の問題は、私のように理屈っぽい人間にはとても理解し難かったので、すぐに許可して帰らせた記憶がある。おそらく理詰めで説得などして教室にとどめておいても、勉強は頭に入らないだろうと思ったからだ。

この負けず嫌いの女子学生は、この後進路を変更して公務員にはならずに、民間企業でバリバリ活躍する女子社員になった。

この学生は私が、担任を持って初めて泣いた姿を見せた学生として、今でも心の中に印象深く残っているのである。ただこの時に、このような1回1回のテストの点数に一喜一憂し、心を揺さぶられてしまう学生の繊細さが、私の心の中にはある種の教訓として残った。

私自身は、今までの経験から、あまり物事を気にせずにさらさら流してしまう習慣が身についてしまっており、このような学生の感性は、自分にとってももう忘れかけたものになっていた。

年齢を重ねると、若いころは自分もそうだったくせに、若い人間の行動を愚かだと思ってしまうこともある。教師をしていても「学生時代を生きる気持ち」を忘れてはならない、と心からそう思ったものだ。

Share this content:

投稿者:

山道 清和

日本の未来への発展と繁栄のために、日本の学生には自分から学び、考え、自分の意見を持つことのできる人材になって欲しいと心から願っています。就職や公務員試験に関する相談も受け付けています。遠慮なくどうぞ。

すべての投稿を表示

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Proudly powered by WordPress | Theme: HoneyPress by SpiceThemes