司法試験
司法試験の短答式は5月に行われた。
これは現在でも変わっていないようだが、現在では法科大学院などの制度があって、私が勉強していた当時とはずいぶん様子が違う。
司法試験は当時、合格者の平均年齢は28歳。
大学卒業時に合格することはかなり難しく、合格者の多くは20代という貴重な時間を試験勉強に費やしていた。
私はこの頃から、自分の関心が法律などの実用的な知識より、人間の生き方や考え方、人生観のようなものに移っていることを実感していた。
ゼミの先生には「君は司法試験には向かないかも」ともいわれていた。それはそうかもしれなかった。気がつけば哲学や思想系統の本ばかり読んでいる。司法試験は実務者の試験だ。
大学4年になったばかりのこの時期、司法試験を目前に控えて私の心は揺れていた。
かなり勉強してきた気持ちはあったのだが、司法試験の勉強に徹しきれていない自分がいた。
ゼミでの様々な学問的研究、サークル活動。読書と後輩たちとの対話。
自分の将来像は全く闇の中だった。両親や友人には、司法試験を目指して上京したい、というようなことを話していたが、自分でもそれが可能なことなのかわからなかった。
おそらくは大学を卒業してフリーターになっていく人の多くが、この当時の私のように、職業に具体的なイメージを持てないでいるのではないだろうか。
何かをやりたいとかやるのだ、などど公言していても、それについて自分でも確信や自信がない状態。
これがフリーター予備軍の共通した特徴かもしれない。
私はこのような中途半端な気持ちで、司法試験を迎えた。
Share this content:
コメントを残す