初めての授業
学生時代をいかに生きるか ―専門学校教師編―その5
副担任として教室に入るようになってから1週間ほどたって、担任の先生から、今行っている民法の授業を受け持つように言われた。とにかく授業の進みが早く、しかもこの学校は必ず週に1回、月曜日に答案練習会(要するに単元テストのようなもの)が行われることになっていて、そのクラス平均点が、集計され、貼りだされるのである。
前の週に学んだことを、翌週の月曜日にテストするわけだ。なんという合理的なやり方だろうと思った。学生はテスト勉強を毎週末にやることになるわけである。真剣に取り組めば、学力が伸びることは間違いのないことだ。
民法に関しては、学生時代に司法試験の勉強をやっていたこともあり、教科書の解説は十分に可能だしすぐにできると思ったが、学生をできるように導くことは、それとはまた次元の違う問題である。どのようなやり方がいいのか、全くわからなかった。
当時、教科書は民法のSシリーズという、大学などでも使われる教材が使われていた。果たして学生たちがこれを読みこなせているのかどうか、かなり疑問だった。しかし、私は当初この教科書をベースに、基本的なことを説明しながら授業を行っていた。しかし、なかなか学生たちはテストで点数を取れるようにはならなかったと思う。
説明が悪かったのではなく、演習量が不足していたことに気がついたのは、それからしばらくたってからで、当初は本当に試行錯誤であった。自分で小テストを作ってみたり、週末に授業の中でも小テストをやってみたり、色々なことを試した。
他の担任の意見も聞いてみたり、やり方をまねてみたり。このような試行錯誤の授業を受け続けていた学生たちには、今でも申し訳ない気持ちがする。しかし、このようなやり方でなければ、決してつかめなかったものもあり、私にとっては必要なプロセスでもあった。
最初に担当したクラスの学生はフレンドリーで、気さくな学生が多く、私にとっては入りやすいクラスだったと言えるだろう。教室の中を回っていても、気さくに話しかけてきたり質問してきたりする学生が多かったのである。私の予想とは裏腹に、態度の悪い学生も、反抗的な学生もいなかった。
そんな環境の中で、私もまた、学生たちに育てられていた。
副担任として、しばらく授業を続けているうちに、今度は年明けには正式に担任としてこのクラスを担当するようにと、指示を受けた。あまりに速い展開に、驚いたものだが、この学校では当時このくらいの人事は普通だったようだ。
まだ、民法の授業すらもままならない中で、来年からはたった一人で68人の学生の将来に責任をもつ立場に立つことになった。
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