「丸山眞男-リベラリストの肖像-」 苅部 直
丸山眞男の本などを読んでいる学生はいまやほとんどいないかもしれない。
私はこの学者については色々な意味で興味があり、何冊か本人の著書も読んでいる。リベラリストだと言われ、左翼の人には人気の学者なのだが、丸山眞男のいう8月15日の革命という、戦後日本の在り方を説明した議論には賛成できなかった。ただ、戦前から戦中、戦後を生きた学者としては、このような議論になることもやむを得ないかと思っている。
憲法学者の宮沢俊儀が「8月革命説」を唱えて、戦後の日本の憲法の在り方を肯定的に説明して見せたように、この時代を生きた学者たちには今にはない苦労もあったのだろう。
この本は丸山に肯定的でもなく、否定的でもなく、伝記的でありながら丸山自身の著書や対談などを根拠にまとめられている。
丸山眞男が警察に逮捕歴があったり、また戦争についても実際に兵士として駆り出された経験があることは、やはり丸山眞男の思想には大きな影響があったものだと思う。
丸山は、国民一人一人が治者の意識をもって政治活動に参加することには肯定的でありながら、今の日本でいろんなところに出没している「プロ市民」といわれる活動家に対しては否定的であった点は、プロ市民の活動家には是非知って欲しいものだ。
私は主権者たる国民が治者の意識をもって政治的な議論や活動に参加することは必要であり、またそうでなければ民主主義なんて立ち行かないと思っている。その点は、丸山眞男の意見に賛成である。
いずれにしても、この本を読んで、丸山眞男にはさらに興味をもったことは確かなことだった。
(神田の古本屋で100円で購入)
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