ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか キューリング恵美子

ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか キューリング恵美子


ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか

学生と面談をしていた時に、「私は自己肯定感が低いです」という話をしていた学生が少なくなかった。日本は子供たちや若者が「自己肯定感」が低いことが、アンケート調査などから明らかになっている。これはある種の謙虚さなのかもしれないし、本当に自信がなく自分の無力感を感じているのかもしれない。私は必ずしも「自己肯定感」が高い必要はないと思ってはいるが、別のアンケートでは日本人が「幸福感」についても、諸外国に比べると低いことがわかっている。これについては大きな問題だと感じる。

日本人が「自己肯定感」が低い理由は、結局他人の評価を気にしたり、他人の周りの目を気にしたりしすぎることが、その根本にあるのだと言えるのだが、因果関係としては「自己肯定感」が低いから、周りの目を気にし、その評価を気にするという態度につながっているのだと思える。自分を出すことや、自分の本音で行動することができない日本人の姿がそこにある。

同調圧力の強さや、自分の本音や本心を隠して行動している日本人は多いのは事実だと思う。確かにドイツに留学していた私の友人は、ドイツにいる時の方が気持ちが解放されて楽だ、と言っていた。

この本では日本人女性がドイツに嫁いで感じた、日本人とドイツ人との行動様式や生活様式の比較がなされているわけだが、確かにドイツ人は他人を気にせずに自分の気持ちを優先させて生活しているようである。しかし、それは他人に無関心というわけではなく、同時に全く見ず知らずの他人に対しても親切にできるドイツ人の姿も描かれている。

要するに「自分がやりたいと思う気持ちに素直に正直に行動している」ということなのである。日本人であれば、誰かに親切にしたいと思っても、他人の目を気にしたり、相手の反応を気にしたりして行動できない人は多いのではないだろうか。

日本人は、幼少から自分の思うがままに行動することで否定的評価をされることが多い教育を受けている。そこから自分を表に出すよりも、周りの人間の反応や評価を優先させてしまう習慣がついてしまっているのだろうと思う。

日本の「おもてなし」などについても、この著者はやや否定的であり、私もこれについては賛成できる面がある。

「おもてなし」そのものは悪いことではないが、この「おもてなしが」相手を尊重し、心からなされるものであれば価値があるが、これが自分の評価や他人からの反応を期待し、自分の本音を捻じ曲げてなされているものであれば価値を持たないと思う。日本のサービス業でなされる「おもてなし」は時に後者であることも多いのではないだろうか。

このようなことを踏まえても、日本はその教育に課題を抱えていると思える。自分を思う存分表出し、それについて肯定的な評価がなされる教育がなされれば、子供たちはもっと自分の本音で生きられるようになるのではないだろうか。周りに迷惑をかけないようにふるまう消極的日本人よりも、周りに何か積極的な働きかけを行うドイツ人の行動様式の方が、個人としては幸せなのだと思う。

また、ドイツでは近所づきあいという地域的コミュニティが自然な形で機能しているようだ。日本では昭和の時代には普通だった近所づきあいが、これもドイツでは自然な形で成立し、共助の機能を果たしている。この辺りはコミュニティの機能が不全になりつつある日本社会はドイツに学ぶところが大きい。

しかし、これもすべては、日本人が周りの反応や評価を過剰に意識していることがその根本要因であるように思える。日本人には周りからどのように評価されても、どのように反応されても、素直に正直に自分の気持ちに従って行動する練習が必要なのかもしれない。学生時代からこのような習慣をつけておくといいのではないだろうか。

学生を見ていると、過剰なまでに他人に気を遣い、自分よりも他人の気持ちや意向を優先させてしまう姿がある。やさしい、といえば優しい学生が多いのだが、それでは自分らしく生きて生活することが難しいのではないか、とも思う。その意味では、もっと「自分なりの幸せ」を追求するのもいいだろう。それが自然と利他行為につながるのであれば、それが最も理想的だと思う。

「自分にとって真の幸福とは何か」。それを探求し、その延長線上に他人や社会の幸福を位置づけることができれば、日本人らしい「幸福」の在り方が具体化していくのだと思う。

この本は、日本人の悪癖を客観化し、反省するための材料になる本である。またドイツ人の自然なふるまいには学ぶところが多いと思う。

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投稿者:

山道 清和

日本の未来への発展と繁栄のために、日本の学生には自分から学び、考え、自分の意見を持つことのできる人材になって欲しいと心から願っています。就職や公務員試験に関する相談も受け付けています。遠慮なくどうぞ。

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