「雨の降る日曜は幸福について考えよう」 橘玲
この本は「幸福とは何か」について書かれたものではない。そのような抽象的な議論ではなく、リアリズムに満ちた本である。橘玲氏の本は、私自身かなり読んでいると思うが、とにかく表向きのきれいごとや世間一般の空絵ごとなどを残酷なまでに引きはがして、この世界の現実を教えてくれる。
つまり、きれいごとなし、なのである。
この本の目次をみればすぐにわかるが、人生設計に始まり、生命保険、年金、医療などなど私たちの人生には欠かせないテーマが並んでいる。このような現実を直視した議論がもっとなされれば、世の中の不公平やひずみはなくなっていくのかもしれないが、賢い人はそのひずみを利用して稼いだりするものである。
私たちが通常、当たり前だと思っている様々な社会制度やその表向きのきれいごとの嘘を暴いて、ありのままの現実を示して見せてくれる。これこそがリアリズムに満ちた幸福論である。もちろん私は、哲学的な理念としての幸福論も大好きだが、多くの人が人生の中で経済的に苦しみ、様々な不自由を強いられていることから考えても、経済的な不自由について、そしてこの世の制度の矛盾やひずみ、また抜け穴について知ることはとても大切なことだ。
橘氏の本で、私が感銘を受けた他の本は「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」がある。これも特有のリアリズムに満ちた投資論?でもあるから、是非読んでみるといいだろう。
橘氏の本を読んでも、幸福とは何かなどということがわかるわけではない。それは自分で考えてもらうことにして、現状の日本の様々な社会制度の中で、どのように自分の生活や自由を得ていくのか、考える材料が山ほど与えられる。
その意味で、社会(世間)に対する知恵に満ち満ちている本である。他にも「上級国民 下級国民」などの本もある。平等や自由が旗印の近代社会の中で、実はそんなきれいごとでは語れない現実があることを、教えてくれる。
若い学生諸君が、このようなリアリズムに対してどのような感想や意見を抱くのかわからないが、自分の人生を豊かにするためにも、知っておくべきインテリジェンスの一つであると思う。面白そうなテーマの本から是非読んでみて欲しい。
(BOOK OFFにて220円で購入)
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