「転んでもただでは起きるな」安藤百福(発明記念館)

「転んでもただでは起きるな」安藤百福(発明記念館)


転んでもただでは起きるな

もうずいぶん昔のことになるが、家族で横浜市にある「カップヌードルミュージアム」に行ったことがあった。私はそこで初めて、世界で初めてインスタントラーメンを発明したのがこの安藤百福であることを知った。

それまでは、世界で初めてカップヌードルを発明したのが日本人であったことすら知らなかったのである。この本は安藤百福の生涯をつづった本であると同時に、安藤百福自身の語った言葉も掲載してある。戦後の復興期から試行錯誤と多くの挫折を経て、日清食品ホールディングスを世界的な大企業に成長させ、食を通じて全世界の多くの人々に貢献してきた物語が語られる。

この時代の日本人のもつパワーというものには本当に驚嘆するのだが、やはり新しいものを作り出す起業家というものは、ある種の神かかったエネルギーが感じられる。昭和の時代に起業して大きな会社やビジネスを起こした日本人の偉大さにはただただ恐れ入る次第である。また、必ずだれしもがある種の哲学を有している。

物質面でも情報面でも、今の時代よりははるかに経営資源が少なかったこの時代に、これだけのものを生み出す力はやはり一つの時代精神を象徴しているものだと思うのである。また安藤百福は彼の発明した面の製造法の特許を公開している。それによって多くの他の企業が色々な種類の麺製品を生み出す土壌をも作ってくれたわけである。

自分の生み出したものを独占せずにシェアすることで、製品の多様化や競争による切磋琢磨によって世界に多くの幸福と富を生み出したのだと言えるだろう。

このような人の生き方からは学ぶことが本当に多い。新たなものを生み出すパワーはもちろんだが、社会貢献の意識や不屈の闘志、挫折したときの考え方や乗り越え方など多くの教訓に満ちた人生である。

しかし、人間にとって、成功した物語だけが多くの人々の福音になるわけでは決してない。多くの失敗を語ってくれるからこそ、それから学ぶところも非常に大きいのである。数々のチャレンジをしているからこそ、数多くの失敗があり、数多くの学びがある。そのようなまさに充実した人生の見本ではないかと思う。

このような昭和の泥臭い起業家の話は、現代の日本の若い起業家たちとはまた別の意味で人生の本質を学ぶことのできる価値あるものである。単なるノウハウや労せずして成功したりお金を得たりする成功談ではないからこそ、珠玉の価値を有するものだ。

日本がこれからまた経済や産業の面で成長し、世界に貢献しようとするならば、このような昭和の戦後の時期に苦労しながら努力を惜しまず、一心不乱に頑張った人々のスピリッツの復権こそが必要なのではないだろうか。

令和の時代の若者たちに、是非この時代の空気感や時代のエネルギーを感じ取って欲しいと思う。それには戦後大をなした多くの日本の経営者たちの人生の軌跡をたどることが一番の有効な手立てとなるだろう。日本には名前こそ著名でなくても優れた経営者や経済人が無数にいたのだ。

この本では、その後半に、安藤百福自身の言葉がたくさん紹介されている。彼が折々に語った言葉であるが、心に響く言葉である。経験から絞り出された言葉の数々は、きっと読む人の心を揺さぶることだろう。

失敗を恐れがちな現代の若者には、このような先人から、七転び八起きの精神を学んでほしい。

(吉祥寺の古本屋で購入 100円)

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投稿者:

山道 清和

日本の未来への発展と繁栄のために、日本の学生には自分から学び、考え、自分の意見を持つことのできる人材になって欲しいと心から願っています。就職や公務員試験に関する相談も受け付けています。遠慮なくどうぞ。

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