「英傑の日本史 西郷隆盛・維新編」井沢 元彦

「英傑の日本史 西郷隆盛・維新編」井沢 元彦


英傑の日本史 西郷隆盛・維新編

この手の歴史本は誰が書いたものを読んでも面白いものだ。それぞれの著者の固有の切り口があり、勉強になる。

この本は、一応西郷隆盛の名前がついてはいるが、ほとんどは薩摩藩の歴史だったり、島津家の歴史だったりが書かれている。人物に関する歴史本は、その人の生まれから書くことが多いだろうが、この本では鹿児島の歴史が、なんと縄文時代や弥生時代にまでさかのぼって書いてあるから驚きだった。

ただ、歴史の前提には地理的な条件や環境があり、その舞台で様々な人の活動があるわけで、中学で地理を最初に学び、次に歴史、そして公民という順番になっているのは理由があるわけである。

そのようなことから薩摩藩の地理的環境から島津家の歴史などが語られ、本の半ばを過ぎても西郷隆盛の話は出てこない。それでも、これほど薩摩藩や島津家について書かれた本を読んだことはなかったので、別の角度からの見方が加わって、勉強になったのである。

私は鹿児島大学の出身だが、私が鹿児島に住んでいたころにはすでに昔の薩摩藩特有の雰囲気などは当然ながら残ってはおらず、当時の学生たちでも自分たちの住んでいる県の風土や歴史について興味をもっている学生は少なかったと思う。

この本では、実際は実にいろいろな人物が取り上げられていて、決して西郷だけについて書かれた本ではない。島津斉彬や久光、またそれ以外の幕末維新の様々な人物に関する評価や行動の根拠などが説明されていて、非常に面白いのである。

また、この本では、日本の明治維新において「朱子学」が果たした、マイナスの役割や影響が詳しく述べられている。このような切り口で幕末維新の歴史を分析したことはなかったので興味深く読んだ。

幕末から維新、そして明治における日本の思想のありかたは、もっときちんと勉強したいと思っているところである。その中に日本らしいもの、日本らしくないもの、今に与える思想の影響などを考えてみたいからである。また、その時代から、日本の在り方が狂ってきたという説を唱える人もいるし、それは一理あると思うからだ。

それはこれからの日本の在り方を考えるためにはどうしても必要な作業であると思える。明治維新によって、日本は何を失い、何を得たのか、それが明治以降の日本にどのような影響を及ぼし、今に至るのか。

ちなみに西郷隆盛についても、その心理的な分析や行動の理由などを著者なりの切り口で説明していて、納得のいくものであった。

この時代について書かれた本は、今後も大量に読み続けていきたいと思っているところである。面白い本があったら是非教えて欲しい。

(BOOK OFFにてクーポン利用で10円で購入)

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投稿者:

山道 清和

日本の未来への発展と繁栄のために、日本の学生には自分から学び、考え、自分の意見を持つことのできる人材になって欲しいと心から願っています。就職や公務員試験に関する相談も受け付けています。遠慮なくどうぞ。

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