「百田尚樹の日本国憲法」 百田尚樹
憲法の改正を実現すべく書かれた啓発の書。日本国憲法を世界に名だたる平和憲法だとか、日本国憲法にノーベル平和賞をなどといまだに語っている人間は、単純に勉強不足か、あえて憲法を改正させないために騒いでいるかのどちらかだ。
今の日本の憲法が、日本人によって作られたものではなく、日本人のために作られたものでもなく、GHQによって即席作業で作られたものであることは間違いない。しかも日本の当時の指導者たちは、GHQに恫喝されて、受け入れさせられたというのはすでにアメリカ側の資料によっても明らかだ(フーバー研究所)。
また、当時この憲法を作ったアメリカ人は、まさかこのような間に合わせの即席憲法を、日本が後生大事にし続けるとは思っていなかったのだそうだ。個々の条文や規定の問題点はここでは述べないが、あまりにもひどい憲法で、これでは今の日本がこのようになってしまうのも仕方ないと思う。これを受け入れ、この状態に甘んじてきたのはほかならぬ日本の国民だからだ。
この本には当然ながら9条をはじめとした、日本の安全保障に関する問題点が最も重視されているが、これまでの日本の歴史の中で、日本が外国からの侵略にさらされた例を挙げ、それをこれまでの先人たちが撃退し、日本を守ってきた歴史についてもまとめられている。日本史の中で、このような項目を、しっかりと教えるべきなのだと思う。
また、戦後日本国憲法を正当化し、権威付けしてきた憲法学者に対しても厳しい批判がされている。私も、法学を学んでいた関係上、特に日本の憲法学についてはかなり勉強したつもりだが、宮沢俊義をはじめとした東大法学部の教授陣の保身による変節には、空いた口が塞がらなかった(宮沢俊義の著書をつぶさに読めば、そこに学者としての信念などないことがよくわかる)。
ただ当時は、これもやむを得なかったのかとも思うのだ。公職追放の嵐が吹き荒れたために、職を解かれることを恐れて、GHQの意向に日和った人間は、宮沢だけでなく無数にいるからである。
日本を弱体化させるために、この憲法だけでなく、様々な手段が用いられた。日本人に罪悪史観を植え付けるプログラムは有名だ。戦前に出版されていた多くの著書を焚書したGHQ。それ以外にもスポーツ、スクリーン(映画)、セックスの3Sによって日本の国民の政治的関心を失わせ、社会や国家、歴史について考えさせないようにコントロールする。これが見事に功を奏して、日本の若者だけでなく多くの大人も骨抜きにされてきた。
自分の生活や身近な楽しみだけで生きていく愚民を大量に生み出すことが目的であり、それは見事に機能している。例えば、日米安保の改定闘争などの時でさえ、反対運動に身を投じた学生や若者の多くは、その改定条約の条文すら全く読んでいなかったのである。要するに戦争反対などのスローガンに簡単に乗せられた愚民だったということだ。
その頃の若者が老人になって、いまだに色んな反対運動をやっている姿を時々テレビで目にすることができる。彼らなりの信念もあるのかもしれないが、多くは勉強不足のスローガン大好きな自己満足型の人たちだ。
私は、憲法はもう一度「日本国民の自由に表明される意思によって、作り直すべきだ」という考えである。GHQはもちろん、アメリカや中国、韓国などを含めた外国の意向など考慮する必要などない。
日本国民が日本をどのような国にするのか、これまで続いてきた歴史や伝統を受け継いで、どのように未来につなげていくのか、国民的議論を喚起して、作り直すべきであろう。もちろん目先の危機はあるわけだから、9条などの改正は行いながら、もっと根本的な国の在り方を含めた作り直しが必要なのである。
明治憲法は欠陥もあったが、日本人が自ら作った憲法である。そこから繋げて、現行憲法のいいところは参考にしながら、自分たちで新しい憲法を作ればいい。しかし、そのようなことに関心のない国民は多く、自分たちの今の生活が維持できればそれでいいという風潮はどうにかしなければならない課題だ。
何かが起こり、身近な誰かが犠牲にならなければ(すでに拉致被害者などの犠牲者はたくさんいるのだが)そのような意識さえ持ちえない今の国民の在り方に対しては、このような憲法に絡んだ著書も、むなしい響きと感じてしまう。
この本は、書物としては非常によくまとまっており、現在の憲法問題の理解にはコンパクトでわかりやすい本だ。全ての学生に読んで欲しい。
今後も、あきらめずに学び、あきらめずに発信する以外には道はないのだろうが、国民だけでなく、政治家(特に自民党の国会議員)もマスコミも、学者も全く本気でないところがこの国の本当の危機を象徴しているのだと思う。
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