「明日死んでもいいための44のレッスン」 下重暁子
私が「死」について考えるようになったのは、やはり病院で看護助手として働いていた時だったろうか。入院時には元気に話せた患者さんが、治療の甲斐なく日を追うたびに重篤になり、最後に息を引き取っていく姿をたくさん見てきた。
ただ、それは本当の意味で、あまり身近というわけでもない。自分が看取ったわけではなかったからだ。私はこの年齢になっても、自分の両親と妻の両親は共に健在であり、田舎で暮らしている。だから今のところ、それほど人の死を身近に感じたことがない。
ただ、色んな事件や事故などが起こるたびに、死について考えてきた。「死」への準備ができることは幸せであり、その準備もなく死を迎えることが不幸なのだと思える。
例えば、かつて大学生が夜行バスの事故で亡くなったことがあった。夜行バスでスノーボードやスキーをするために乗車中に、事故に巻き込まれ多くの若者が亡くなった。おそらくは睡眠の途中だったろう。目が覚めたら白銀の世界で、仲間と楽しく遊べるはずだった。このような死は、なんの準備もない状態でいきなり訪れる。
人間はいつ何時と思っていても、本気でそのような準備をしている人は少ない。この本では死の準備のための多くの項目が挙げられているが、若い人にとっても、意識しておくべきことがたくさんあると思う。特に事故などでの死の確率は、高齢者も若者もあまり変わらないはずだからである。このような準備は、自分で自分の死をイメージできれば可能になるはずだ。悔いのない毎日を送るためにも、是非考えてみてほしいものだ。
死は忌避すべきものという意識は捨てるべきだ。冷静に受け入れて準備しておくべきもの。それが死である。また死については、緩和医療医の書いた「死ぬときに後悔すること25」と言う本もお薦めしておきたい。死を前にして多くの人がどのようなことを後悔しているのか、について多くの患者さんの実話がまとめられている。
後悔しない人生のためにも、このような死の観点から自分の人生を考えておくことは非常に重要なことだと思う。なぜなら死は誰にも例外なく訪れ、誰一人そこから逃れることはできないものだからである。この当たり前の事実を意識して、後悔のない人生を生きる努力や工夫をすることが、よりよく生きることにつながるだろう。
下重暁子氏の本は、他にも「極上の孤独」や「年齢は捨てなさい」を読んだことがある。どれも自分の人生を少し真剣に考えてみるなら、若い人たちにも参考になるのではないかと思う。
(公立図書館で借りたので、0円)
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