「日本滅亡論」 藤井 聡
正義感の強い熱血漢の著者による日本滅亡論。とはいっても、絶望的な内容とそれを覆すための方策にも触れてある本であり、内容は短いものなので、学生の皆さんには是非読んで欲しい本だ。
今、日本が諸外国と比較してどんどん優位性を失って、貧しくなり、国力を弱くしている根本原因、これが「緊縮財政」であるということだ。
これは私も他のところで何度も言っている通りである。この考え方さえ改めて、政策に反映できれば、日本は間違いなく再び不死鳥のようによみがえり、所得は上がり豊かな国になる。経済的に豊かな国になるということは、国際的な発言権も強くなると同時に、世界への影響力も大きくなるということである。
まず、この本では、日本だけが経済成長できない理由を「緊縮財政」によるものだと結論づけている。これは全くの正論である。積極財政を行うと、日本の借金が増えて破綻するという全く起こりえない嘘を前提にして日本の財政政策は実行されている。
他の諸外国は経済成長しているのに、日本にそれができない理由は、国債発行に制限を設け、また消費税を導入してそれをどんどん上げていることによるのである。
経済の大きな動因は国民の消費である。消費活動が活発になれば、商品が売れて企業は儲かる。それによって国民の給与も上がりまた消費活動が活発になる。こうして経済が成長し善の循環が始まる。企業が儲かれば、将来を見越して投資活動も活発になる。このような善の循環の逆を行くのが、今の日本なのだ。
国の財政をまるで家計と同じように考えて、借金(と言っても政府の負債で国民の資産)が増えると破綻すると考えているのだが、このような間違った考え方の政治家や官僚ばかりだということだ(財務官僚はこの事実を知りながら嘘をついている)。政府は自分たちでお金が作れる(通貨発行権がある)ことを忘れたかのようだ。
そしてもちろん無知で不勉強なマスコミも財務官僚に騙されて、嘘の情報を流し続け、政治家も国民もこの考え方を変えることができない。
このような緊縮財政を続けると、緊急時の対応が全くできない国になる。コロナ禍の国民に対する給付金の少なさが象徴的だ。アメリカなどは多額の給付を国民に対して行っているが、それでも財政破綻などしていないし、大きな問題にはなっていない。
イギリスもアメリカも政府の債務残高は右肩上がりに増えていて、日本と何ら変わらないのだ。それは政府の負債は国民の資産になるからである。
これでは、危機の時に国民を十分に救うことができない。また災害大国である日本はインフラの整備や国民の生命や財産を守るための投資すら十分でなく、おそらく大きな災害が襲って来ればその被害は甚大で、もはや日本は発展途上国並みになってしまうだろう。
それもこれも緊縮財政のもと、国が財政出動を出し渋る政策ばかりを行っているからである。そしてこれが間違っていること自体を政治家が認めず、そのようなアドバイスや提言をしている人の話も聞かない状況なのが今の日本の政治状況である。間違った考えや政策をここまで国民が貧しくなっても変えられない理由は、国民もそれを支持しているからだとしか言いようがない。
国民もマスコミの「財政破綻する、後世に借金を残す」などの言葉に騙されて、真実を学んだり知ろうとはしない。これが「しかたないね」と言いながら、どんどん貧しくなってきた日本の姿である。
そのような意味では政治家も政府も、本気で国民を豊かにする気がないし、国民も政府の言うことだから、マスコミが言うことだからと疑問を持たない思考停止から脱却できていない。これでは子供たちに決して豊かな未来を残すことはできない。
この本が、その題名を「日本滅亡論」という刺激的な題名にした理由はその危機感からであることがわかるだろう。このような内容は当然ながらマスコミは流さない。インターネットや本によって知ることはできるが、そのような内容のテーマの話を、自分で検索して調べる人間は少数派である。
右肩上がりに豊かになっていく中国に、今の日本は買われ続けている。土地や企業、そして女性までもが買われていく現状がある。貧しい人々が、自らの土地や資産を、そしてその身さえも中国に売り渡してしまうのだ。貧しくなるということはこれほど大変な事なのである。
この事実を知れば、危機感を持たない方がおかしいのだが、政治家をはじめとして多くの日本人は「ゆでガエル」の状態で、自らの衰退と滅亡をまっているかのようだ。
学生たちにもこの事実を知って、多くの国民がこれを共有できるように学んでほしいと思う。日本の未来はこのような政策の変化をもたらすことができるかどうかにかかっている。日本の沈没を防ぎ、本当の意味で未来の子供たちを守りたいのであれば、学び、真実を知るところから始めなければならない。真実を知って声を上げることが日本を変えることにつながるだろう。
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