「日本国史 上」 田中 英道

「日本国史 上」 田中 英道


日本国史 (上)

日本の国史の平安時代までを述べた著書(それ以降は下巻)であるが、この本を読めば、日本人としての誇りや自信や私たちの先祖に対して深い尊敬と親しみがわいてくるに違いない。

日本では天孫降臨などの話が国の始まりとして語られるが、そもそも「高天原」というのが架空の天上界にあるようなものではなく、関東だったという推察が述べられている。関東から鹿児島に渡った日本の神々(と言っても実在の人物)が西日本を平定し東征してきたのであると述べられているのである。

高天原が関東にあったという根拠もしっかりと述べられていて、私としてはこれまでの自分の日本の古代史のイメージが一気に変わる大転換の書物であった。関東から始まった日本の国づくりは、その地の人々が関東から船で九州に移り住み、そこから関西へと進んで、大和の国が作られたということである。もちろん、空想などではなく、きちんとした根拠も述べられているから、是非読んでみるといいだろう。そこでは神社の役割が非常に大きいことがわかる。

歴史というのは特に古代史についてはその理解や解明は難しいのだが、この本の著者はそれを見事に、説得的に解き明かしてくれる。有名な卑弥呼や邪馬台国については、むしろ空想の産物として、その実在には疑問を投げかけている(魏志倭人伝を疑えと述べられている)。それもまた私にとっては衝撃であった。

古代から日本の文化や芸術、宗教などを含めて、政治や社会の制度を鳥瞰し、日本人が実に優れた精神と文化と歴史を有していたことが語られる。日本は遅れていたが、明治以降文明開化で文明化した、などというものではなく、はるか昔から日本には優れた文化、文明があったことを知るだろう。

また、この本では、いわゆる「進歩史観」というものは排除されており、日本には昔から優れた人々、生活、文化が存在し、人間は昔も今も大きく変わらないものであること、遅れていた古い昔、などという概念は排除すべきことが訴えられている。それは確かにそうであろうと思う。古典とされる文学や芸術をみても、それが現代の日本人の感性よりもはるかに優れた面があることを否定はできない。

その意味で、「復古」というものは、絶えずなされながら、私たちはこれからの未来の在り方を設計していく必要があることを教えられる。日本のこれまでの歴史を肯定的に見ていくことで、私たちは先人たちの残した貴重なギフトを受け取ることができるのだ。

このような本を読んでいると、これまで自分が学校で学んできたことが、真実とは言い難く、学び続けなければ、真実には近づけないことがわかる。もちろんこの著書で述べられていることが完全な真実であるかどうかについては、完全な証明は不可能であるが、私たちがそれを受け入れ、共通の歴史認識としていくことはとても大切であると思う(違う意見や学説があってもいいが、結局は多くの人々がそれを受け入れ、信じられるかにかかっている)。日本人にとって日本史とはそのようなものではないか。

日本という世界最古の優れた国家が、現在崩壊(溶解)の危機にある。それは日本人がそのアイデンティティたる日本史に関して、共通の自信や誇りを喪失したことにその原因があると言っていい。日本史の大幅な見直し、事実に基づいたより正しい解釈が求められているのである(日本史の教科書には明らかな捏造された事実が平然と書かれている)。

この本は、非常に読みやすく、わかりやすくまとめられた本である。読んでみれば、今まで学んできた歴史観が大きく揺さぶられることは間違いない。その揺さぶりを大切にして、学び続け、考え続けることが大切だ。それは歴史について考え続けることであると同時に、自分自身について考えることでもあることがわかるはずだ。

(アマゾンで購入、990円)

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投稿者:

山道 清和

日本の未来への発展と繁栄のために、日本の学生には自分から学び、考え、自分の意見を持つことのできる人材になって欲しいと心から願っています。就職や公務員試験に関する相談も受け付けています。遠慮なくどうぞ。

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