「日本は戦争に連れてゆかれる 狂人日記2020」 副島隆彦

「日本は戦争に連れてゆかれる 狂人日記2020」 副島隆彦


日本は戦争に連れてゆかれる

著者は異色の評論家、研究者であるが、コロナに対する見解は、私も全く同意見である。多くの専門家や政府、メディアの騒ぎ、国民の狂騒をよそに、当初からコロナはインフルエンザや風邪などと大きく変わらない、と断じていた。

コロナ騒ぎを冷静に見れば、日本人が集団狂乱に陥っているというのは正しい認識であると思える。それがいまだに続いているのだから呆れる。この著書が書かれたのは2020年だ。それからもう2年以上が経っているのに、根本的な対応はそれほど大きく変わっているとは思えない。本当に信じられない現状だ。

この本の趣旨は、日本が先の大戦に突き進んでいった経緯と、現在の日本の状況が流れとして一致していて、今後2024年には経済恐慌、そしてやがては戦争へと向かうことになるという予言?をしている。

笑えないし、十分に可能性のある予測なのである。日本人の集団でのヒステリー体質は全く変わっておらず、このような体質が変わらなければ、また同じ過ちを犯すことになるだろうということだ。すでにコロナで無駄な自粛や意味のない対策に100兆円ちかい金額をつぎ込んできた。このようなお金があれば、日本が抱える様々な問題に対して、多くの対策が可能だっただろう。これこそが集団狂騒が引き起こす大いなる無駄と悲劇である。

この本では約80年周期で歴史が繰り返されることを根拠に「戦争」に突き進む可能性を示唆しているわけだが、それまでにはまだ多くのプロセスがある。それについては歴史から学び、回避しなければならないのだが、今のところ日本人はそれができていない。マクロの視点から歴史を鳥瞰するような見識をもった人間が政治家はもちろん、言論人や経済人にも少ないからである。

副島氏は現在、海が見える岸壁の家に1人で暮らしているという。個性的な研究者、評論家はどこか似ているところがあるが、小室直樹などともイメージが重なる。副島氏自身は自分は吉本隆明の教え子であると述べているが、私個人は吉本隆明をあまり評価していない。ただたった一人で日本や世界を見続けながら、独自の視点で見えたものを表現し続ける言論人としての覚悟は尊敬に値する。

世間からは狂人扱いされていることから自分で「狂人日記」と名付けているが、このような人の言論が、ずっと後に正しい警告であったことがわかったりすることは、歴史上頻繁にあることだ。ただ戦争の予言だけは当たらないことを願いつつ、その流れにならないように可能な努力をすべきなのだと思う。

この本の中で、私が思想的に影響を受けた「有島武郎」の話が出てくる。有島は父親から相続で譲り受けた北海道の広大な土地を無償で農民に分け与えたのだという。彼の自殺の7か月前のことらしい。このような自分の知らないエピソードが随所に出てくるから、本を読むと様々な物事に対する理解や視点が広がる。

先の大戦前後の政治家や言論人の言動についても語られている。この中で、清沢冽という人物の「暗黒日記」という本が紹介されている。戦争時の真実を語るものとして評価されているようだが、私は全くこの人物を知らず、そのような日記の存在も知らなかった。早速、購入して読んでみたいと思う。

このようにして、本から本を知り、読み継いでいくことが私の楽しみの一つでもある。副島氏の視野の広さや見識には驚くばかりであるが、今後も氏の著作は興味のある分野から読み継いでいきたい。

このようなまともな人の言論がこの世界から封じ込められないようにするには、それを読む人、知る人が増えなければならないのだろうが、今の日本ではいわゆる「キワモノ」扱いされることは間違いないだろう。それは今回のコロナ騒ぎで、私も十分に経験したことである。

少なくとも、どのような言論であっても、自由に表現され、自由に発表される環境の確保には努めなければならない。しかし、現状はメディアの世界でも、インターネットの世界でもそれが難しくなってきつつある。受け取る側の行動や調査力が必要になってきている。また、書物の形では様々な情報を発信していくことは可能なれど、読書する人は驚くほどに少ない。

ただこの本の主張するように、日本がだんだんおかしくなってきていることは私も実感している。おかしなことばかりが平然とまかり通っているが、これもすべては国民が関心を持たず、自分の身の回りのことだけを考えながら生きる「視野狭窄」の状態に陥っており、「思考停止」状態にあるからだろう。

若い世代に、いい日本を残して行くためにも、そしてこの状態を少しでも変えていくためにも、可能な努力を続けたい。

(BOOK OFFにて、クーポン利用で10円)

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投稿者:

山道 清和

日本の未来への発展と繁栄のために、日本の学生には自分から学び、考え、自分の意見を持つことのできる人材になって欲しいと心から願っています。就職や公務員試験に関する相談も受け付けています。遠慮なくどうぞ。

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