「心配事の9割は起こらない」 枡野俊明
よくある9割本の一つであるが、人間の心配事について様々な角度からの考察と対処の仕方が述べられている。人間には、生きている限り心配事は尽きない。そういう今でも、心配で夜も眠れない人もいるかもしれない。
人間の悩みの中心は大きく分けて三つのことがあるだろう。一つは持ち越し苦労。過去のことを悩んでくよくよし後悔する。二つ目は、まさに今現在の悩み、今苦しんでいるとか、やりたいことができないとか、人間関係で苦労をしている場合など。最後がいわゆる取りこし苦労。未来に起きるかもしれない不幸や失敗を心配して悩むこと。
さて、あなたの悩みはどれに該当するだろうか。この本ではある意味では、このすべての悩みに対応する処方箋が書かれていると思うが、それにはやはり心を自由にし、心を軽くすることが最も重要だということだろう。仏教の思想に「執着を去る」というのがあるが、それができれば人間のほとんどの悩みはなくなることと思う。
この本では、まず心の断捨離。これがまさに仏教的な解決方法だろう。そして今に集中すること。これは禅の奥義かもしれない。そして競争から離れること。そして人間関係の対処の仕方。最後には悩み方を変えるということが提唱される。これは自分の悩みを異なる観点や見地から再解釈してみるということだ。
また、この本の題名のように、心配事はまさに多くが「妄想」であり、現実でないことを思い描くことから来る。そのほとんどは起きないものだ。仮に起きても、思ったほどの問題ではなかったり、それによるダメージはそれほど大きなものではなかったりするものである。
そもそも人間の悩みというものは、どうにか解決がつくものであって、多くの人はそれをできないと思い込んで失望、あるいは絶望してしまうのだ。全てを受け入れてしまえば、実はどうということではないことが、ほとんどではないかと思う。解決できない悩みというのは基本的にはない。ただ自分が自分を投げ出さなければ。
その意味では、仏教の言う無になることなどは非常に有効ではある。無心や無執着こそが悩みの解決の最も有効な手段である。もちろん、無になることが難しいからこそ、人は悩むものでもあるのだが。できるだけ自分の心にまとわりつく想念を綺麗にすること。それがまず第一になされるべきことである。
また、自分の悩みから離れる方法は、自分のことを考えすぎない、ということも大切だ。他人に目を向けてみれば、自分よりも大きな苦労や悩みで苦しんでいる人はたくさんいる。このような時は、そのような人と自分を比較するのも悪くないし、そのような人の力になってあげることができれば、自分の悩みなどは小さなものであることが実感されるだろう。
この本の著者は曹洞宗の住職だ。確かに禅の教えの中には、人間の悩みを解消し、心を軽くするヒントがたくさん隠されている。このような本で学んだら、私たちが日常的に経験する様々な悩みに対しての解決法は、自分だけのためでなく、他人の悩みを軽くしてあげることに使って欲しいと思う。
そうすることで、人間についての理解が深まり、自分の器が大きくなることは間違いないことだ。学生時代に、周りの友人や知人など、多くの人の悩みを聞いてあげられる、頼りになる人間になれたら、それはとても素晴らしい学生時代であると言えるのではないだろうか。
自分のために、ではなく、他人のために、このような本を読んで学んでおくことを勧めたい。
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