「就活ジプシー」北野正人 佐川健太郎
せっかく就職してもすぐにやめてしまい、その後きちんと就職できずに、アルバイトや非正規の形で働く人が増えている。もっといい職場はないか、もっといい職場はないかと転職を繰り返したりする。労働条件にこだわり過ぎて、なかなか働き続けられないということだろうか。
それを就活ジプシーと呼んでいいかどうかはともかく、学生の時から「就労観」をしっかりと作った方がいいという本書の意見には賛成である。しかし、就労観というのはその人の人生論でもあり、幸福論でもある。それを学生時代に作るためには、そのような講座を大学に設置し、学生にしっかりと時間をかけて考えてもらい、他人との意見交換や、社会人との交流の場を作る必要があるだろう。
もちろんそれ以前に、学生は労働に関する知識も十分でなく、入社後、就職先での長時間労働やパワハラ、セクハラに近いことも我慢している若者もいるかもしれない。そこでは泣き寝入りで職場を去るような若者も少なくないだろう。私も今、ある県立大学でキャリア支援の一環として求人票の見方などを含めた労働法制の講座を行っているが、このような働く上での基本的知識も、大学で身につけておくことは必要だと思う。
確かに、よく考えずに就職して、入ったらやはり違った、などと言っていたら、いつまでたっても同じ職場で働き続けることはできないのではないかと思う。そうやって就活ジプシーになることは本人にとっても、日本にとっても不幸なことだと思える。
この本では、就労観を磨くために「リッチピクチャー」という手法を紹介している。かつて流行したマインドマップのようなものだろうか、本の中には十分な説明はされていないので、どのような手順で作っていくのか、わかりにくい面もある。ただ、自分を振り返りながら自分と他者、社会との関係を目に見える形にしていくというのは必要な作業である。これは就職活動とは別に、大学に入ったらやってみる必要はあるものだ。
これは私がよく言っている、人生観や世界観、職業観や幸福観を作っていきながら就職につなげていくやり方であろう。そのような就労観をしっかりとつくったうえで就活し、納得のいく就活ができれば、就活ジプシーを減らすことができるというのがこの本の趣旨のようだ。
この本には、それ以外にもマニュアル頼みの就活の落とし穴や、スマホに依存した就活の問題点など、学生が陥りがちな課題についても述べられている。就活も様々な人の意見を聴きながら、自分でそのスタイルを作っていく必要があるのだろうと思う。
企業のホームページや応募ページなどは所詮、企業の広告に過ぎない。その企業で実際に働いてみなければ見えないことは山ほどある。私の経験からも、求人票に書かれている条件(特に時間など)について、その通りの運用がなされている企業は皆無であったから、現実はそう甘くはないということだろう。その意味でも、まずは自分の納得のいく就活、主体的に選んだ企業だと言えることが大切であるというのはその通りかもしれない。
その会社の現実は、そこで働いている人に聞くのが一番であるが、それすらも部署や立場やその人の価値観によって情報に偏りがあることは事実だから、結局飛び込んでみて、そこで一定期間努力し、頑張るしかないのではないだろうか。そうしているうちに総合的に判断してどうしても継続することが難しければ転職を、お酒を飲みながら愚痴を言う程度で済むのならその職場で継続して勤め続ける。続けていればいいこともあるだろう。そして本人の長期的なキャリアプランも同時に必要となるはずだ。
私も安易な退職や転職は勧めない。日本ではそれはまだまだリスクが大きく、やるならばしっかりとした準備や自分の実力が必要なのである。ある会社ではなく、他のどこでも汎用性のある能力やスキルを身につける努力が、長期的には人生を豊かに明るくしてくれるのではないだろうか。しかし、それすらも今の会社でやっていることで成果をあげられるように必死で取り組んでこそ身につくものだ。
学生のうちは、自分の将来設計や人生における仕事の位置づけ、自分の幸福観や人生観をできる限りしっかりと考えておくことだろう。その意味でも多くの人の人生に触れて、多くの社会人の話を聞いて、多くのことを実行してみる積極性はどうしても必要なことに思える。
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