「一流の育て方」 ムーギー・キム ミセス・パンプキン
この本は、様々な世界で活躍する日本を代表するトップクラスの若者たちへのアンケートをもとに、どのような家庭教育で育ったのかという調査をもとに書かれた教育本である。
私も、長い間教育の世界にいるわけだが、昨年までは学習塾で働いていたこともあって、家庭の在り方には大いに関心を持っていた。様々な子育ての悩みにも接してきたが、結局は親の家庭教育の結果であると言わざるを得ないことが多かったのは事実である。
この本では、家庭において具体的に親の在り方が、その子供たちにどのように受け取られていたか、その子供たちが、自分の家庭での教育の在り方のいいところ悪いところを含めてまとめた形で構成されている。
実に多くの項目があって、一つ一つは納得のいくものであることは間違いないことだ。ただ、やはりそれは理想であるので、この本の一部でも実践できれば、教育的には非常にいい効果が生まれるものと思う。
この本のいいところは、たんに学歴エリートを目指すようなコンセプトではなく、子供たちが自分たちの人生を幸せに生きるというコンセプトから成っていることだ。私もかつて「幸福への教育」というものを書いたことがあったが、結局教育とは「幸せ」というものの実現が目的であることは間違いのないことである。
しかし、実際に日本の教育業界は、保護者のエゴから、親のための教育論や親のための子供の教育になってしまっている。中学受験も実は親の都合、塾業界も業界の都合、学校も学校の都合が優先されて、実は本当の意味で子供たちの成長や幸せを軸に考えられていないことも多い。
その意味では、学校教育だけでなく、親もその家庭教育において、子供の幸せにとって何が本当に必要で重要なのかを探求し、そのために学び、考え、具体化していく強さが必要なのである。世間体などに振り回されているうちは、子供たちの中に大切な資産を残してあげることは難しいだろう。むしろ親のエゴによる教育は子供たちの中に負の遺産を残してしまうだろう。
また、親の教育や家庭教育が重要であるとは言っても、それも一定の年齢までである。子供たちはやがて家庭以外の世界で勝手に学び、勝手に育っていくものだ。そのような、適度に手を放し、離陸させるための教育もとても重要だ。もちろんその後に大きく飛翔するためにも、幼少からの家庭教育は重要である。ただ一方で、所詮子供の人生は子どもの人生であるという乾いたあきらめも大切であろうと思う。
親子と言えども別人格、いつまでも親がその子の人生の責任を負うわけでもない。親は親の人生をしっかりと生きることが、本当はその子のためにもなるのである。親は親の人生を一生懸命に楽しんで生きたらいい。
この本には完璧なまでに、教育に必要な項目に触れてある。親だけでなく、誰かを育てる仕事や、指導する立場にある人にとっては参考になることも多いはずだ。結局は教育の仕事は、教育をしていると思っている人間が、一番教育されているのであって、よく見てみればどちらも学ぶものとして対等なのである。
その認識に至ることが、最も教育にとっては重要な認識の土台であると、私には思える。そのうえで、各々の与えられた役割を全うすべきなのだ。
(BOOK OFFにて200円で購入)
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