「キレイゴトぬきの就活論」 石渡嶺司
23卒の就活がおおよそケリがついて、現在は24卒の就活がすでにスタートしている。もちろん申し合わせとしては来年(2023年3月から)広報などの解禁と言われて、そこからが就活のスタートだという建前になっているのだが、実際は2022年夏から24卒の就活はスタートしている。
このような時期的な面も含めて、就活には本音とタテマエが同居していて、学生にとってわかりにくい面がある。またそれによって不安を感じることもあるだろう。
この著書は、学歴フィルターの存在も含めて、就活の本当の姿が率直に述べられていると思う。また、学生が疑問に思う様々な事柄について、経験豊富な筆者ならではの説明もあるので、納得できる内容になっている。
学歴フィルターは実際には存在しているが、それがどのように機能するのか、またしないのかは雇用環境やその企業の経営環境などにも左右され、また学生個々人の実力にも左右される面があるわけだから、固定的な基準はないと言ってもいいだろう。
私は、そのようなものを気にしている暇があったら、自分が行きたい企業があったら、自分の大学名など気にせずにどんどんエントリーしてみればいいと思っている。どこに行っても、実力は問われている、と考えて努力するしかない。
だから、それでダメなら学歴フィルターが原因かもしれないし、自分の力不足かもしれない。いずれにしても落とされたら、気にせずにまた次のチャレンジを続ければいい。
この本の中で、学歴フィルターを気にするような学生ほど、大企業しか受けなかったり、実際に準備不足、努力不足だったりする学生が多いことが指摘されている。自分の実力の不足を「学歴フィルター」のせいにして言い訳に使うこともあるのかもしれないが、それはなんら積極的な意味を持たないしやめるべきだろう。
この本ではこのような問題だけでなく、様々な就活上の問題に触れてあるので、学生は読んでおくと参考になる。SPIについて、エントリーシートについて、またブラック企業について、などなど興味深い内容が並べられている。
就活の重要なカギは「社会人慣れ」であるという主張もあるが、私の経験からもこの要素は重要であると思える。学生の中には、社会人とどのように接していいのかがわからず、緊張してしまい、必要な行動を積極的にとることができなかったり、委縮して自分の良さを出せなかったりする者が少なくない。
この本で、最も参考にして欲しいのは、最後に企業のリストがまとめられているところだ。「日本人が知っておいてもいい企業300」として特徴のある企業群が並べられている。「知っておくべき」としなかったのは、著者の配慮だが、これはいわゆる世間でよく知られている有名企業ではない。
しかし、個性的で特徴のある企業である。このような企業を発掘して、優秀な学生が就業してくれれば、その企業にとっても、日本にとっても、また当の学生にとっても幸せなことではないかと思える。
名の知れた企業だけを企業研究の対象とするのではなく、このような特徴のある個性的な企業を探す努力を、学生たちには望みたい。
就活については、私の関係している分野でもあるので、それについてはまた自分なりの見解も別のところで述べてみたいと思うが、就活のリアルを知っておくことは、学生にとって非常に重要なことであるので、一読をお勧めしたい。
私は、就活については、基本的に「行動力」の勝負だと考えている。行動力による経験の蓄積とそこから得られる知恵や要領や振る舞いの全てが、やがて内定に結びつく成長の必要な過程であり、それができる学生を企業は望んでいるのではないだろうか。
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