「かくて昭和史は蘇る」 渡部昇一

「かくて昭和史は蘇る」 渡部昇一


かくて昭和史は蘇る

知の巨人、渡部昇一氏が亡くなって、もう6年もの歳月が過ぎようとしている。直接お会いしたことはないが、私が渡部先生に教わったことや、受けた影響は非常に大きかったと思う。氏の著書はほとんど読んだと思うが、最初に読んだ本は「知的生活の方法」。参考になる内容ではあったが、当時の私には環境面も含めて、実現は困難なことに思えたことを記憶している。しかし、「知的生活」というものの幸福を教えてくれたのはまさにこの本だった。

氏の専門は英語学であるが、歴史や人生論なども含めて他の分野の本のほうが多く、おそらくは内外の多くの人々に多大な影響を与えられたのではないだろうか。特に私にとっては歴史(日本史)について、氏の著書を通じて学んだことも多く、教科書ではとても知りえない歴史上の事実や本当の歴史を探求するきっかけを与えられた。

次には人生論の分野だろう。様々な人の生き方や人生哲学、人生論を解説、解読しつつご自身の経験も踏まえた見識は、私の考え方や生き方にも多くの影響を与えられた。氏の書籍を通じて日本の明治時代の億万長者、本多静六博士のことを知り、その著書にも大いに啓発された。本多静六博士の本では「私の財産告白」「本多静六自伝」は生き方の参考になった。

さて、本題のこの本は、昭和史についての解説本なのだが、ここに書かれた内容については、今の大学生には是非知って欲しいことが多々含まれている。たとえ高校の時の選択科目が日本史で、受験科目が日本史だったという学生でも、山川出版の日本史の教科書程度ではとても学べない内容が盛り込まれていて、この1冊だけでも、歴史認識が大きく変わることは間違いのないことである。

歴史は複雑であり、そう簡単には理解できないこと。日本史の教科書に書いてあることにも多くの嘘が含まれていること。特に戦後の歴史教育が歪んだものであり、あるいは意図的に捻じ曲げられたものであることがわかるだろう。日本がいまだに中国や韓国と、その歴史認識が一致しない理由も、本当の意味での友好関係を築くことが今のままでは不可能である理由も実感できるかもしれない。

一つだけ、例を挙げよう。日本史の教科書にも普通に書かれている「南京大虐殺」というもの。これが事実無根のでっち上げであることがこの本を読むと明白になる。全てきちんとした事実を追いかけていくことで、そのような虐殺はなかった、と断言してもいいと思う。この本の中にそう考えていい根拠が示されている。しかし、日本人はそして日本政府は、このような事実をもとにした議論や説明をせずに、ただただ「謝罪」を繰り返してきた。

韓国に対しては、いまだに解決がつかない「従軍慰安婦」の問題。そして「徴用工」などの問題も、事実をもとにして正しい議論を行えば、日本側にほとんど責任を問われるべき問題などないことがわかるだろう。

しかし、多くの日本人は事実を知らない。学ばない。もちろん政治家も同じであって、間違った認識のままで、「謝れば済むのだ」と思っている。本来謝る必要がないことを謝れば、それは責任を認めたことになる。残念ながらそれを逆手に取られて、延々と貶め続けられてきたのが、日本の情けなき現状である。

歴史認識の問題といわれるが、事実をもとに議論をしないことが大きな問題なのだ。認識の問題などではない。事実の問題である。

歴史を学ばない、知らないことの罪は大きい。自分たちの先祖がなしてきたことを誤解し、悪しきものだと信じ込み、その当時を生きた人々の真実を知らぬままに、外国の要求に翻弄され続ける。情けない国民とそれを象徴する政治家の姿が、ますます日本をダメにしている。

事実に基づかない罪悪史観で他国と関係を結ぼうとしても、本当にそれが真の友好関係だろうか。それを真剣に考えてもらいたいものだ。しかし、その根本問題として国民が無知であり、真実の歴史を知らない、そしてそのようなことに全く興味もないということが、この問題を歪んだままにし続けている。

この本には、日本が先の大戦を戦った理由や背景も語られている。もちろん日本の側にも失敗や失策が多くあったのであり、戦争に至ってしまった理由や問題解決できなかったことなど課題も多かった。この本はそのような意味で、日本の立場を説明すると同時に、日本の問題点や課題についても明確にされている。昭和史はこの本だけで十分だと言えるような内容である。

結果的に先の大戦によって、日本は敗れはしたものの、人種差別が解消し(潜在的にはまだ残っているが)多くのアジアの国が独立を果たした。世界で初めて「人種差別の撤廃」を提言した日本にとって、犠牲は大きかったものの、大局的には世界の現状を変える力にはなったということだ。

「大東亜共栄圏」という言葉の真の意味も、当時の必要性も、この本を読めば理解されるだろう。日本人であることに、誇りを感じることもできるようになろう。

歴史には直接関係のないことだが、渡部氏はこの本の最後で、「減税」について触れられている。日本を再び文化の中心にするには、国民が使えるお金を多くし、無駄遣いができるほどに豊かにすること。これが日本の繁栄の道である、ということだ。

今の日本がその逆を行っていることは誰でもわかることだろう。多くの富を国民からむしり取り、それを再配分するという名目の重税国家は、国家社会主義的な官僚主導の国になることを意味している。

再配分は、官僚の権限を肥大化させる。官僚支配は戦前から続き、戦後も修正されなかった日本の汚点である。それどころか、財務省などは、この官僚支配をさらに強めるために、様々な理由をつけて増税に突き進もうとしている(増税が全く必要のない間違った政策であることは、私は別のところでも述べた)。

歴史から学ぶことなく、自分たちの省益しか考えない愚かな官僚たち。その官僚に支配されて本当の政治家の役割を果たせない多くの政治家たち。この国益なき官僚支配を打破するためには、日本が犯してきた失敗を本当の意味で検証し、反省し、修正しなければならないだろう。

しかし、懲りない官僚や政治家は、また別の方法で国家を衰退に導いていくつもりでいるようだ。氏がこの本の最後に、「減税」を訴えていることは、氏の遺言であると思う。これが日本の繁栄を左右する大きなキーワードだ。しかし、当の国民が、他人事のように、この増税を受け入れている限りは、日本の衰退が止むことはない。未来の子供たちに豊かな日本を残してあげることはもはや不可能になる。

国民が主権者としてもっと学ばなければならない。そして無関心な若者が、正しい歴史や、これからの自分たちの国の在り方を真剣に考えてくれることを願っている。まずは、昭和史の正しい理解が必要だ。そのための重要書籍として強くお勧めしたい本である。

(神保町の古本屋で購入 100円)

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投稿者:

山道 清和

日本の未来への発展と繁栄のために、日本の学生には自分から学び、考え、自分の意見を持つことのできる人材になって欲しいと心から願っています。就職や公務員試験に関する相談も受け付けています。遠慮なくどうぞ。

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