交換日記
今は携帯電話でメールをやり取りする時代(すでにスマホでライン)だが、この頃は携帯電話の普及などは全く予想だにしなかった。
私の学生時代は部屋に電話も引いておらず、連絡を取りたいときはもっぱら公衆電話を使っていた。
その意味で非常に不便だったわけだが、コミュニケーションの不便さは逆に人の心を近づけることがあるものだ。
ある日、私の部屋に来た彼女は突然「交換日記」をやりたいと言い出した。
私にとっても懐かしい響きの言葉だった。確か中学時代に好きな異性と交換日記をするなんてことが流行ったことがあったっけ。
彼女はなぜか、私とその「交換日記」をやりたいと言い出したのだ。
私にとってはお互いに考えていることを毎日伝えあうわけだから、この彼女の申し出はとても嬉しかった(この時の彼女の意図は今でもあまり理解できない)。
理由の詮索は特にしなかった。
二人で文房具店に出かけていき、ピンク色の日記を二冊買ってきた。お互いが一冊ずつ持って、毎日記入して、翌日に交換するのである。
もちろんこの段階でも彼女は私の「彼女」ではなく、お互い男女として付き合っていたわけではない。
そう考えるとこのときの私と彼女の関係はとても不思議な関係であった。
こうして日記のやり取りが始まった。「交換日記」を通じて、彼女と私の内面のつながりは非常に深いものになっていった。私は言葉数が多く、いつもたくさんのことを書くのだが、彼女の書く日記はいつも短かった。この日記は、一応まじめに継続されて、私が卒業するまで続いた。
現在、その日記はどこにあるのだろう。

一度はお互いが一冊づつ持っていたが、私が大学を卒業した後は彼女が二冊とも引き取ったはずだった。
その後、お互いに別の異性と結婚した。「交換日記」は学生時代の思い出になってしまった。学生時代、お互いの心の対話を記録したその日記を,彼女はきっと今でも持ち続けているはずだ(後に彼女の実家に保管されていることがわかった)。
私としては、当時の自分の心の記録を、再度読み返したい衝動にかられることがある。
Share this content:
コメントを残す