「西洋文明の没落」 福沢桃介

「西洋文明の没落」 福沢桃介


この本は福沢諭吉の養子であり、福沢諭吉の次女と結婚した福沢桃介の手によるものである。この本は西洋人の黒歴史とでもいうべきものを暴露した、あるいは考察した論考である。戦後この本は焚書されたが、この度復刻された。日本との戦争に勝った欧米人は、この本の内容を隠したかったのだ。

簡単にいうと、西洋の歴史は、基本的に物欲の拡張によって成り立っているということだ。もちろん欧米にも宗教や哲学はあるが、欧米の歴史的営みは、ほぼ欲(物欲)とその拡張欲によって営まれてきたというのがこの本の基本的な趣旨である。

西洋の文明というものが本当に人類の幸福に資するものであるかどうか、人類を幸福にするものであるかどうか、ということに関して徹底的に疑いの目を向ける。

奴隷制、アジアの植民地化、度重なる戦争、金融資本の横暴。どれをとってみても人類の幸福に貢献したものはない。ただ彼らの「欲」を満たすためだけに行われてきたものである。

そしてそれは現在も続いていて、日本もそれに巻き込まれ、その支配下で欧米化し「精神」の価値を失いかけている。世界で初めて人種差別の撤廃を提案した国は我が日本国であるが、西洋はそれを許すはずもなく、日本を叩き潰すことが世界支配と白人の幸福に資する道であるとして、台頭する日本を徹底的に排斥しようとしたのである。

奴隷制においては、同じ人間である有色人種を、まさに動物、家畜と変わらない意識で扱い、人間扱いしない前提で歴史は動いてきた。またアジアを植民地としてきたことも、共存共栄などという考えは全くなく、いかに自分たちの利益のために搾取するかということが主眼とされた。

そして世界の様々な場所で戦争を起こし、それによって金をもうけ、有色人種の民族を支配し搾取し続けていたのである。日本が欧米と戦争をし、敗戦国となったものの、このような植民地支配は表向きは困難になった。戦後アジアの植民地が数多く独立したことは先の戦争の大きな収穫だったのだ。

この本では、このような白人の文明では世界を幸せにすることはできず、新たな文明原理が必要であることを説いている。ヨーロッパ文明の限界をこの段階で明確に指摘しているのはまさに慧眼と言わなければならない。ヨーロッパ文明では物質的な幸福や自然の克服をその原理とする限り、世界の人口が増えてしまえば、やがては人口削減に向かうしかないという。まさに今の世界はそのように動いており、グローバルエリートたちは増え続ける世界人口の全てを受け入れて、お互いに幸せになっていく道を探るのではなく、人口削減を目論んでいる。

この本では、世界の人口が何百億人になろうとも、なお共存共楽の世界を作ることのできる文明原理が必要であることを主張するのである。そしてヨーロッパ文明ではそれは不可能であり、東洋の可能性に言及する。そこにおいて、人間の幸福の原理を物質に求めるのではなく精神生活に求めることの必要性が提案されているわけだ。

この本では最後に、日本の役割や責任について、次のように述べる。

「かくのごとき新文明を建設するために、日本は、従来の世界歴史並びに人類史の方向性に一大転機を与え、・・・・須らく有色人種の先頭に立ち、徹底的に白人の反省を求め、画期的大運動を続けて行かねばならぬのである」

残念なことに、この本が出版されて後の大戦において、日本は英米に敗れて、その力を大きくそがれるだけでなく、事実上アメリカの支配下に置かれることとなってしまった。しかし、その運動は終わったわけではない。日本が真の独立を勝ち取り、欧米と対等に渡り合い、その過ちを厳しく指摘し、世界の歴史を多くの民族が共存共栄可能な世界へと導かなければならない。

そのために必要な条件を福沢桃介はこの本で明確に述べている。それは外国から支配されたり侮蔑を受けたりすることのない「武力」の備えである。これがなければ結局は自分たちの言い分や自分たちの国家そのものを守ることができず、侮辱や支配を甘受しなければならなくなる。

精神文明の重要性を言いながらも、このように世界の現実を厳しく見つめ、必要なことを冷静に提案できる点は、日本の空想的平和主義者とは全くレベルが違う。ここにしなやかな現実主義と柔軟なプラグマティズムがある。これはまさに「福沢諭吉」が有していたものでもあるだろう。

他国の侮りや侵略を許しているようでは、日本は日本の役割を果たすことはできない。現在の日本はまさにそのような状態に置かれていると言ってもいいだろう。事なかれ主義や争いを過度に恐れる気持ちから、他国の価値に支配され蹂躙され続けているのが我が国の現在の姿である。

世界の数多くの民族や国家が、あるがままの姿で共存共栄し、世界を平和裏に発展に導く力は日本の歴史や文化、そしてその思想の中にある。日本文明こそが世界の牽引車にならなければならないのである。

それが今の日本からすると、はるかに遠い理想であったとしても、あきらめたくない気持ちがある。その気持ちを後押ししてくれるこのような論考を残しておいてくれた先人たちに、感謝と尊崇の念を禁じ得ない。

日本人の全てが、このような世界史的な使命に気づき、自らの役割を自覚し立ち上がることを願って止まない。それはこのような先人たちの願いであるだけではなく、日本国建設の理想でもあったのではないだろうか。

(ダイレクト出版で購入 550円)

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投稿者:

山道 清和

日本の未来への発展と繁栄のために、日本の学生には自分から学び、考え、自分の意見を持つことのできる人材になって欲しいと心から願っています。就職や公務員試験に関する相談も受け付けています。遠慮なくどうぞ。

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