6人の講演会(3)
講演会が終了し、大教室を出た。
私もNも無言のままだった。
教授が奥様に抱きかかえられるようにして車椅子に座られたシーンが目に焼きついた。
大学の授業では通常受けたことのない感動があった。
情熱を込めて生きること。
精一杯努力すること。
後悔のない時を過ごすこと。
私も大学をつまらない冷めた世界だと思っていたが、それでも自分で何かを見つけなければ。まだ大学にも、私の心の中にも小さな火種が存在したのだ。
将来、どんな仕事をするにしても、たくさんの感動で埋め尽くされた人生を生きていきたいと願った。
またそれは講演をされた教授の学生たちに対する願いでもあっただろう。
無言のままNと私は部屋に帰った。
その日は一晩中考えた。
自分にできることは何か。
きっとそれを求めてもがき続けることでいつかは答えが見つかる。必要な世界に導かれる。その時がいつやってくるかはわからないけれど。
なぜかその日はそのような確信を持てた。
自分のライフワークが必ず見つかり、自分がこの世界に生まれてきた意味みたいなものを。
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