6人の講演会(2)
教授の話が始まった。
約一時間近くも話されただろうか。
内容もよく憶えているのだが、何より私が大きく心を揺さぶられたのは、自分の信念に基づいて必死に学生に対して語りかけられたその姿勢そのものだった。
大学の先生の授業にはこの「熱意の込められた語りかけ」が欠けているのだ(学問研究にそんなこと求められても困る、という声が聞こえてきそうだが。しかし、大学の先生の役割は研究と教育だ)。
学生だけが無関心なわけではなかった。
当然この講演会には1人の先生方の参加もない(先輩研究者、先輩教育者の話を聞いてみようとは思わなかったのかね)。
みんながさめていた。
今、目の前で熱心に話されている教授は、わずか4人の学生のために時折激しく咳き込みながらも必死に大きな声で話をされている。
まるで最後の訴えでもあるかのように。
この教授が最も訴えたかったのは結局、自分以外の全てのものに無関心な大学の先生や学生、そしてそんな雰囲気を作り出しているこの時代というものへの反骨精神だったのかもしれない。
教授は数ヶ月前に脳梗塞で倒れ、今は体の自由が効かないのだと言う。
言葉はしっかりとされていたが奥様の介助と車椅子が欠かせない。
このような状態で企画された自身の講演会。若手の教員達は誰も手伝わなかったという。
講演会が終わった。
「たった4人だったが君達が来てくれて本当によかった 本当にありがとう」これが締めくくりの言葉だった。隣で支えられていた奥様も深々と頭を下げられた。
熱意のこもった言葉。信念からの言葉。本気の言葉。
私の湿った心が少しずつ変り始めたきっかけとなった言葉。
この約一年後。
教授はこの世を去っていかれた。
Share this content:
Related Posts