迷いに迷う
「大学院」への進学。
この加藤先生の提案に私はかなり迷った。
そもそも大学院の入試に合格するだろうか。
大学院に行っても「司法試験」の勉強は可能だろうか。
学費や生活費でまた親に負担をかける必要が出てくるのではないか。いや当然出てくる。私には二つ下に弟がいて、すでに私立大学に自宅外で通っている。一体どれだけの経済的負担になるのか。
大学院に進んでもその後はどうなるのか。私は学者になることを本当に望むのか。望まないならばそもそも大学院に行く必要などないのではないか。
このようなときにどのような判断基準で進路を決めていくべきなのか。
これについては明確な答えが自分にはなかったと思う。職業についての意識が十分でなかったのだ。
法律家?本気でなりたいものなのか。学者?学問的な世界には惹かれるが、大学の中で研究することが本当に自分の天職なのか。
すぐに答えを出すことはしなかった。
幸いまだ時間があったからだ。
もっと自分と向き合って、よく考えて、決めようと思った。
大学院の入試は2月だった。まだ十分な時間があった。ただ受けるとなるとそれなりの準備が必要だろう。
先生に話を聞くと、大学院の入試に必要な科目は英語、民法総則、法社会学の三つ(すべて記述式)。これならすでに学んでいることばかりだ。なんとかなるだろう。
こんな大切な決断を先延ばしして、大学四年の夏から秋にかけて、私は今までより一層サークル活動に没頭した。
大学時代で最も活動的で行動的で社交的な時期になった。
非常に多くの人と出会い、多くの本を読み、色んなところに出かけた。
自分というものを深く見つめ、知るための貴重な時期だった。
このような活動をしながらも、夜中には自分一人で考えた。私の天命は何か?私の本質は?個性は?自分にとっては何が一番幸せなのか?社会に貢献できる自分の資源とは何か?逆に一番やりたくないことは何か?などなど。問いは尽きることがなかった。
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