論文の準備と猛勉強
大学院に入学して半年が過ぎた。
私は杉並区の高円寺に住んでいて、私の住む場所の近くには、当時数多くの古本屋があった。
休日にはそこに通いつめ、乱読につぐ乱読でかなり多くの本を読んだ。
大学時代から数えると私が読んだ本の冊数は千五百冊ほどになっていた。狭い四畳半の部屋にはどんどん本が増えていき、置き場に困るようになった。
大学院では狭い範囲の研究をしなければ評価されなかったから、私の本の読み方は研究者にはふさわしくなかっただろう。
私はこの時期、他人や社会に関わっていくためには自分がいかに物を知らないかということを痛感していた。
アルバイトをやりながらの勉強はかなりつらかったのだが、体力には自信があり、かなり無理をしてがんばった。

将来自分が大学に残って大学の先生になろうという気持ちは薄れていたが、自分の道がどうであれ、勉強することは楽しかった。
とにかく二年で大学院の修士課程を修了し、学位を取得して一定のけじめをつけなければならなかった。私の大学院のゼミの先輩は何年も論文を書かずに修士課程にい続けていた。
私にはそのような経済的な余裕もなければ、時間的余裕もない。
この時期は睡眠時間を削って勉強に勉強を重ねた。
一日のうちに最も多くの時間を勉強に割いていた時期がこのころだった。
寝ている時間やアルバイトの時間以外は全ての時間を勉強と研究に費やした。
誰にでも過去に対する後悔、そして将来に対する不安はある。
それを克服する最も大きな力は、今に対する集中であるし、それしかないのである。
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