明治大学の大学院で

明治大学の大学院で


学生時代をいかに生きるか まとめ編 その49

上京しすぐに世話になったこの友人は大学受験に一度失敗し、浪人した後に東京のある私立大学に入学した。その後様々な家庭の事情や親子の葛藤などがあり、結果的に大学をやめてフリーターになっていた。

この頃はまだ景気がよくて、アルバイトもたくさんあったし、今とは違う意味でフリーターは非常に多かった。定職にはつかなくても、収入はそれなりに確保できた時代だ。

この夜は久しぶりに色んなことを話した。

私が明治大学の大学院に進学することを友人は喜んでいたし、ずっとここから通えばいいと言ってくれた。もちろん家賃など払わなくてもいいと。

この友人を見ていると、基本的にはお金にも困ってはいなかったし(車はBMWを乗り回していた)、楽しそうにしていたのだが、なぜか一抹の寂しさや、不安を抱えているように思えた。

本当に仲がよくて、たくさん話したと思っていたが、まだまだこの友人についても、私は知らないことが多くて、理解していないのだろうと思った。

大学をやめた理由も、何となく明確でなかったし、全ては話せなかったのかもしれない。

その意味で、たった一人の人間でさえ、深く理解することの難しさを感じたし、少し離れてしまうと、もう相手は自分とは別の世界を生きていて、私が見ている彼の姿は、ほんの一部だったのではなかったかと思う。高校時代は一緒にギターを弾いて騒ぎまくり、私の家に泊まっては朝まで語り明かした間柄ではあったのだが。

私は翌日からアルバイト探しを始めた。とにかく仕事は選んではいられなかった。学費は両親に出してもらうことになってはいたが、東京での生活費やそれ以外の費用は、奨学金とアルバイトですべて賄う必要があった。

福生の駅の周辺を歩き回ったが、大学の授業の無い日だけのアルバイトはなかなか見つからず、焦りに焦った記憶がある。近くのソバ屋で皿洗いをしようと掛け合ってみたが、時間が合わない。断られた。

福生から、大学のある御茶ノ水まで通うのが非常に大変で、これが悩みの種だった。

交通費もバカにならない。そう遠くないうちに、この部屋を出て行かなければならないだろうと思った。

大学院の授業が始まっても、アルバイトはすぐには見つからなかった。

大学院では民事法学専攻で法社会学のゼミに所属することになっていた。当時はマスコミなどで非常に著名だった栗本慎一郎教授のゼミである。この年の大学院のゼミ生は私一人であったが、一人だけ上に先輩がいた(この先輩はもう何年も修士論文の作成をせずに大学院に居座っている人だったが、とてもいい人で、親切だった)。

明治大学は現在、非常に立派な建物が建っており、学生の数も増えて、人気の大学になっているが、当時は建物も古く、今の校舎からは想像もできないような大学だった。学生運動の名残があり、大きな立て看板に政治的なスローガンが掲げられていたり、敷地の中でマスクをした活動家がビラを撒いたりしていた。

大学院の建物も古く、最初はここが大学院だとは思わずに、通り過ぎたものだった。ただ私は、歴史のある古風なかつての校舎は嫌いではなかったが、とても綺麗だとは言えない代物。

大学院の仲間たちは、別の専攻では人数が多かった(法哲学では中村雄二郎先生が人気だった)特に法哲学のゼミ生とはよく一緒に議論したり、遊んだりした。大学院では真剣に学者を目指している人はむしろ少なかったように思う。今でもそうなのかもしれないが、文科系の大学院の意味や意義は今後問われることになると思う。

私自身は、学問そのものに関心がなければ、文科系で大学院に進むことはあまりお勧めできないと思っている。就職浪人するならば、留年の方がいいだろう。大学院の修士などというものは、ほとんど世間では役に立たないし(民間企業ではマイナスに働くことの方がむしろ多いかもしれない)、早く就職したほうがいいと思う。

ただ、私の場合は、2年間という時間や東京という場所をフルに活用できたことで、充実した大学院生活を送ることができた。色々な人に出会ったし、書物も無数に読んだ。研究するということ、論文を作成する方法についても数多くのことを学んだ。そう考えると、時間と環境の使い方によって、大きな差が出てしまうのが、大学や大学院だ。

今は多くの大学生たちを面談することが多いが、同じ大学時代でも、信じられないほどその充実度に個人差があり、これは大学の偏差値とは全く関係がない。

学生たちには、やはり一日たりとも学生時代を無駄にしないで欲しい。何かの機会があったらすぐに飛び込んで行動に移してみる。あらゆるチャンスを決して無駄にしないこと。結局この時代の価値を決めるのは自分自身でしかない。

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投稿者:

山道 清和

日本の未来への発展と繁栄のために、日本の学生には自分から学び、考え、自分の意見を持つことのできる人材になって欲しいと心から願っています。就職や公務員試験に関する相談も受け付けています。遠慮なくどうぞ。

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