日本人のための憲法改正入門（３）

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前回は、日本がこれまで、なかなか憲法を変えられなかった理由について考えてみました。

今回は、それとは逆に、なぜ憲法を変えるべきなのかという点について考えてみます。

憲法を改正すべきだと考える人の多くに、現憲法の欠陥を挙げる論者も多く存在します。「押しつけ憲法論」や「憲法無効論」など、現憲法はそもそもの生い立ちに問題があり、それであるがゆえに変えるべきだという理論です。

私は純粋な法律論としては「憲法無効論」が一番正しいと思いますが、現憲法が無効だから憲法をつくり直すべきだとは考えていません。

憲法は政治的社会的存在であり、純粋に法律論として論じることはそもそも無理なものであると思います（多くの憲法学者は怒るでしょうが）。憲法は政治権力との関係が不可分の法なのですから、その時々の政治権力の在り方から離れて、憲法論をやっても、抽象論にしかなりません。

私は、現憲法を変えなければならないと思っていますが、もはや現憲法の発祥などを議論しても憲法を変える力にはならないし、その具体的な構想も出てこないだろうと思っているので、そのような議論にはあまり興味はないのです。

そのような議論は学者が研究としてやればよいことで、具体的に憲法をつくり、書き換えていく作業は、国民が日本国民として持っている根本的な国家観や理想、そして、これまでの歴史や伝統を踏まえて、この日本をどんな国にしていきたいのか、という未来像に依存していると思うのです。

すでにずいぶん前から、憲法の改正に関わる試案はいろいろなところから出ていますが、それをいくら読んでも、私にはまだまだピンとこないものがあります。

憲法を変えるのに、過去に理由を求めるのではなく、あるべき未来像から逆算して、憲法を構想するということ、そして、当然に国家自体が歴史的産物なのですから、その歴史や伝統の在り方を十分に勘案して、新たな憲法を考案していく。これが私が提唱する新たな改憲学（現憲法の解釈学ではなく）の在り方なのです。

憲法を変えなければならない理由。

それは日本が歴史と伝統のある国家として、優れた文明と文化をもった国家として、世界の数多くの人々から尊敬され、あこがれられる民として、世界史的に果たさなければならない役割があり、それを果たすためには現憲法では全く不十分だから、ということです。

少なくとも、真に自立し、独立した国家でなければ、このような世界史的役割を主体的に、責任をもって果たすことは不可能です。

現憲法はすでに「独立自尊国家」としての最低限の基準すら満たしていません。

そのような国家構想、国家の理想、国家の未来像を抜きにして憲法改正を論じても、それはほとんどが無意味であると思います。

その意味であるべき日本の姿から逆照射し、歴史や伝統との連続性を勘案して、改正していくべきポイントを考えていくべきでしょう。

次回からは具体的に改正すべきポイントを述べていきたいと思います。