新クラスで補習を始める
学生時代をいかに生きるか ―専門学校教師編―その22
1年目の担任としての学生の試験結果は、不本意なものだった。今度こそはと気合を入れて2年目の担任の業務を始めた。専門学校は通常2年制だが、3年生のクラスもあって、私は新たにそのクラスの担任になった。
私が勤めていた専門学校では、年度ごとにクラス替えや担任替えがなされることが多かった(当時)。私は3年制2年の新学期からの担任になった。3年制というのはそれなりに難しく、2年目は中だるみが発生しやすい。新規の専門科目も教えていくのだが、復習に時間を割くことも多かったので、演習が中心になる授業もあった。
3年制2年時には経済学の学習は一通り終わっていて、演習が中心であったが、専門科目はまだいくつか残っていた。行政法を授業でやることになっていたのだが、この科目は私も学生時代には学んだことがなかったのである。原田尚彦の「行政法要論」という専門書を使って授業をするのだが、学生がこの本を最初から読みこなすのは難しいと感じた。
私は自分で本屋に行って、公務員試験用にもう少しわかりやすく要点をまとめた参考書を探した。ハンディで手軽なものが見つかったので、これを参考にしながら、教科書の内容を組み合わせて、できるだけわかりやすく授業を行ったことをよく憶えている。自分に必要な教材や書籍は、職場の経費などで落としたことは一度もない。全て自腹で購入して自分のものにし、線を引いたり書き込みをしたりして使った。
この専門学校では、教科書を進めると同時に、過去問集を学生に配り、一通りの授業が終わると過去問の演習をやるようになっていた。それでも過去問の内容が十分にわからないという学生は多かったように思う。それは当然であり、行政法の概念や用語が十分に理解できていなかったからであった。
そこで私は、過去問演習の補習を放課後に行うことを決めた。自分の勉強にもなるので、始めたのもあるが、学生にはしっかりと学力をつけてもらって、公務員試験では結果を出して欲しいと思ったからである。通常の授業は17時50分に終わるので、18時10分から19時間で、その補習をやり始めた。
その時のクラスの人数は50人ほどだったと思うが5、6人の学生が授業後も残ってその補習に参加してくれた。意識の高い学生たちだった。この補習は行政法の授業が一通り終わるまで続けた。
この補習をやりながら私は、結局授業の時間を前提にして、それ以外の時間にもいかに学生に勉強してもらうかを考える必要があることを実感していた。前提知識がほぼゼロで専門学校に入ってくる学生たち。その学生たちに大学4年生と戦える学力をつけさせるためには何が必要かを考えた。
やはり必要なのは自習力であり、自習がしっかりとできるようになれば学力はついていくものである。ただまだこの時の私は、学生に対して、自分が何かをしてあげなければならないと考えていた。放課後の補習はまさにそうだったのだが、これによって学生の学力がどれくらい伸びたのかは十分にわからなかったのである。
そして私はといえば、この補習が終わってから、教務室に戻り、そこから明日の準備を始めていたので、帰る時間は徐々に遅くなっていった。
まだ自分のクラスの運営スタイルや自分の方法論を確立できずに悩んだ時期ではあった。3年制2年の学生は、受験が近いわけでもない。学校にも慣れてきた頃でモチベーションの維持が非常に難しかった。学生との関係は決して悪くもなかったが、どのようにすれば学生のやる気を引き出し、自習力をつけさせられるのか、またクラスのまとまりを作るにはどうすればいいのか、迷いのクラス運営は続くのである。
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