失ってはならないもの
有名な歴史学者のトインビーは、以下のような趣旨のことを述べている。
1 自国の歴史を忘れた民族
2 すべての価値を、物やお金に置き換え、心の価値を失った民族
3 理想を失った民族
このような条件に当てはまる国家は、100年以内に例外なく滅びるだろう。
さて、この言葉。今の日本はどうだろうか。
1の歴史。確かに学校で教科書を使った歴史を学んだだろう。しかし、多くの日本人は日本の真の歴史を知らない。それどころか、日本や日本人を貶めるような歴史を国家を挙げて教え、今の若者のほとんども日本の歴史の真実を学んでいない。また、別の学者は自国の神話を学ばない民族は滅びる、と言っている。
それも当然である。偏った歴史認識で書かれた教科書で高校まで一通りの歴史を学んでも、それ以上に学ぶ機会はなく、自ら進んでそれを学ぶ人も少ない。真実を知らされることなく日本人としての人生を終える人がいかに多いことか。その意味では、1の条件には見事に当てはまり、それどころか国家を貶める歴史を学んでいるという意味でさらにたちが悪いと言えるだろう。
2はどうか。もちろんお金も物資も大切である。人間がこの世の世界を生きていく限りは、その重要性は軽視できない。しかし、今や日本人の多くも経済的な価値だけを重視する偏った世界を生きている。もともと日本にはなかった「今だけ、金だけ、自分だけ」がはびこりつつある。日本の貧困化がそれにさらに拍車をかけている。
3についてはどうか。日本は国家として、いかなる国家であるべきか、という理想を共有しているだろうか。自分の人生だけでなく、この社会や世界の在り方について国民は真剣に考えているだろうか。もはや無関心か、自分の生活世界だけの関心事に心を奪われているだけではないのか。民主制の社会においては自らが国家の主人公であることを忘れてはいないか。あなたが社会や国家に関心を持たなかったら、誰がその責任を引き受けるのか。
日本の現状を見る限りでは、このような3つの条件を満たす方向にその風潮は流れており、それは政治家をはじめとしてすべての世界にまん延している。
若い学生たちに言いたいのは、まずは日本の歴史をもっとしっかりと学んでほしいということだ。全てはここから始まる。日本の歴史教科書がいかに薄い、内容のないものか、そして時には嘘さえ書かれているという事実に気がつくだろう。
まずは、近代史から学んでほしい。明治維新から現在に至るまでの歴史ほど誤解されているものはない。どんな本でもいい。また現在は動画などでの発信者も多い。容易に学ぶことができるはずだ。
日本人は古来、「精神性」の高さがその資産であった。
それを失わせるのが、まさにトインビーのいう3つの条件である。
「精神性」
これが重要なキーワードである。そしてそれを取り戻すためには、歴史を正しく理解することが必要だ。そこに日本人が受け継いできた精神が息づいているからだ。
もちろん歴史には様々な解釈がある。どの立場に立てというわけではない。多くを学んでいけばやがては真実に近づくことができるだろう。
それにより日本人の先祖から受け継がれてきたものが何なのか、他の民族とは異なる個性や独自の精神とは何なのかを感じ取ることができるだろう。
失ってはならないものを、今の日本人は失いつつある。多くの若者が、国家衰亡の3つの条件を打破して日本の興廃の真なる責任者となることを願っている。
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