冬の終わりに
学生時代に話を戻してみたい。
ついに大学4年の冬が終わろうとしていた。短かったとも長かったともいえる不思議な4年間だ。
卒業が近づいてきた。サークルの後輩達と過ごすことができるのもあと数週間。もちろん親友のNや彼女ともそうだ。
私は自分の地元の大学に進学したのではなかった。
この地を後にすれば、旅行で来るのでなければ、再び戻ってくることはない。そう考えるとこれまで過ごしてきた4年間の歳月がいとおしく思える。かの鹿児島が生活の場になることはもう一生ないだろうと思った。
当然私の大好きだった多くの後輩達にも、もうなかなか会えないだろうと思った(事実そうなった)。
毎日のように彼らと話をし、語り続けた。
当時は携帯電話やメールもない。インターネットなども普及していなかった。言葉をやり取りするツールは、現在の方がはるかに便利で豊かだ。しかし、彼らと同じ場所で、同じ時を過ごしてやり取りした言葉のおびただしい量と質は、現在の学生たちの比ではないだろう。
だからこそ、離れてしまうととてつもない距離を感じてしまう。
私は大学の卒業式には参加していない。この大学で学んだことのほとんどがサークルで後輩達が私に教えてくれたこと。そして読書や経験から学んだことだった。
もっとも、ゼミの加藤先生から直接教わった数々の教訓は、私の人生の進路にも大きな影響を与えた。
まずは私より先に親友のNが鹿児島を後にした。
電車で一旦地元(長崎)に帰り、就職先の会社のある場所(兵庫県)に向かうことになっていた。
駅で大勢の後輩達と共にNを見送った。

このNがいなかったら、私の大学時代は全くちがったものになっていたに違いない。これほど充実した学生時代を送れたのは、彼の行動力のおかげである。
積極性に欠けるところのあった私を変えたのも、彼の物おじしない明るいエネルギーの力であったと言っていい。
後輩の一人がボロボロと涙をこぼしながら駅のホームにたたずんでいた。別れの切なさ。
あと数日で・・・今度は自分の番だ。・・・・・・みんなとは別れたくない。
Share this content:
コメントを残す