自分の中にある力
私は長年教育の世界で仕事をしている。
教育の仕事は、よく言われるように「引き出すこと」である。
何かを教えたり、伝えたりすることはできるが、成長するのは本人の力。
当然勉強するのは本人だから、教育者ができることは限られている。
よく言われるたとえ話に、「馬に水を飲ませようと思って、水飲み場に連れていくことはできても、水を飲ませることはできない」というのがある。
馬が飲まないのであれば、誰であっても馬に水を飲ませることはできないということである。
だからいい先生は、生徒をやる気にさせる人、きっかけをうまく与えられる人、ということになる。水を自ら飲もうという気にさせてくれる人、ということだ。
これはしかし、比較的世間一般には理解されていることだ。
しかし、教育で言われるこのような常識は、医療にも言えるのだ。
医者は病気を治すことはできない。
病気を治す働きは、人間一人一人の体の中にしかなく、体の機能によるしかない。教育と違うところは、人間の体はいつも健康であろうと努力し、健康であろうと働き続けているということだ。なんという努力家だろうか。
その意味では、医者の仕事は、人間のこの働きを最大限に助け、人間の体の働きの治癒力を活用する環境を作り、その働きをいかに助けるかということでなければならない。
しかし、現状はどうであろうか。
そうでないことが行われていることが現状ではないだろうか。医者は患者を医者や医療に依存させ従属させ、患者であり続けることを望み、そこから利益を得続ける。
もちろん、医療の世界が全てそうではないことは確かで、優れた心ある医者も多い。
私が言いたいことは以下の通りだ。
教育も医療も、人間がもともと持っている力を「引き出すこと」が仕事であり、いかにそれを成すべきかを考えることができる人が、優れた教育者であり、優れた医師である。
また、自分に現れるすべての不都合な現象は、自分の中にある機能や働き、そして力が、十分に発揮できていないことがその原因なのだ。
このように考えることができる教育者や医師がいて、また、それを理解できる学習者や患者が力を合わせてこそ、教育は健全に機能し、医師の治療も健全に機能するということである。
これは普遍的な真実である。そして自分が持てるこの内なる力は、誰もが平等に与えられている。
だから、この真実をもとに日々の自分の行動や活動を振り返ってみて欲しい。
自分の力で、そして場合によっては他人の力を借りて、自分の持つ能力や力を、最大限に引き出し、発揮するには何が必要なのか。どんな環境やどんな友人、先生が必要なのか。
自分の抱える困難を乗り越えるためには、絶対に、他人が何とかしてくれると考えてはいけない。
そう考えることがあなたの力の発揮を妨げ、それが顕現することに蓋をする。それをいかにして取り除いていくのかを考えなければならない。
それを考えながら、自分の持つ力を信じ、それを引き出す行動をとることが必要なのである。
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