何故、今日本なのか(6)
「古代への情熱」という書物がある。私はこれを学生時代に読んだ。
ギリシア哲学を学んでいた時、ギリシア神話に興味が湧いて、それが神話ではなく事実であることを確かめた人がいたことを知った。
それがハインリッヒ・シュリーマンだ。
10以上の言語をマスターし、稼いだお金を遺跡の発掘につぎ込み、ついに大発見を成し遂げた人だ。その経緯が「古代への情熱」としてまとめられている。
実はこの人物、幕末の日本を訪れていて、その時にこのように述べている。
「この国には、平和、行きわたった満足感、豊かさ、完璧な秩序。
そして世界のどの国にもまして、よく耕された土地がみられる」
もちろん江戸時代の日本であるから、全ての地域やすべての日本人がそうだったわけではないだろう。しかし、この当時世界中を旅していたシュリーマンは、日本が世界でも有数な豊かで秩序ある国であったことを発見したのだ。
また役人の高潔さにも讃嘆している。
お金で動くことなく、自分の役割を全うしようとした日本の役人たちの清貧であり高潔であったという。役人にお金を渡しで融通をきいてもらおうと思ってお金を差し出したが、固く断られたというのである(外国ではこのような賄賂は普通のことだった)。
武士は貧乏だったが、まさに高潔だったということだ。
また日本はこの当時は農業が主体の国だったから、多くの豊かな田畑を目撃したのだろう。
現代の日本はどうか。
賄賂で動く公務員は多くないかもしれないが、政治の世界はお金だらけ。国民もそれで動かされるようになってしまっているのではないか。少なくとも当時よりは、その悪しき風習が一般化して広まっているはずだ。
政治に理念や哲学を求めるのではなく、目先の便宜や経済的な利益を求める国民が、国を悪くしているともいえる。
また、田畑は少なくなり、日本の農業は衰退している。むしろ積極的に農業を衰退させるような政策が行われている。
そのために日本の食料自給率は低下の一途をたどり、有事の時には日本国民は飢えることになり、食料をめぐって、他国の言いなりになるしかない状況だ。
日本人が、古い日本から学ばなければならない理由。
それはそこに、日本が独立し、さらに豊かになるヒントが無数にあるからだ。取り戻さなければならない精神性、自然環境があるからである。
シュリーマンの短い言葉に集約された理想を、もう一度見直してみる必要があるだろう。
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