未来への不安を感じて

未来への不安を感じて


学生時代をいかに生きるか まとめ編 その49

昔話を書いてみようと思う。

大学卒業後、九州から東京に引越ししてきて、明治大学の大学院に進学した。

あれからすでに35年の歳月が過ぎた。

東京もずいぶん変わってしまった面もあるが、上京したての頃を思い出す。

大学の卒業式(出席はしなかったが)が終わり、東京に出ることが決まってはいたが、実は住む場所を決めてはいなかった。

私の高校(長崎県立大村高校)時代の友人が東京の大学に進学(しかし中退し、この時はフリーター)していて、先に上京していたので、その友人の部屋に転がり込むことになった。

私が上京することを聞いた友人が、「俺の所にこい」と強く勧めてくれたからである。3月の末に大学のサークルの後輩達に見送られて、鹿児島空港を飛び立ち羽田へ。

実家のある長崎には寄らず、直接東京に向かった。

私の数十箱の書物と、わずかな衣類は、直接鹿児島から東京の友人宅へと送られた。

友人の部屋があった場所は福生だった。

都心からは離れていたため、上京した初日に、電車の乗り継ぎで大変だったと記憶している。今ならば何のこともない話だが、田舎からきた私にとっては、東京の電車の数と、路線の多さは難しく感じられた。

何とか電車を乗り継いで福生の駅に着き、友人のマンション(ワンルーム)を探した。

駅からほど近い場所にそのマンションはあった。マンションのドアに数字のボタンが付いていて、番号を押すことでロック解除できるものだった。友人から番号は伝えられていたので、その番号を押してマンションの部屋に入った。

友人は仕事で外出しているから、出迎えはできないとのことだったので、勝手に部屋に入ったというわけだった。

部屋に入ると、私の荷物が部屋の隅に積み上げられていて、狭い部屋をいっそう狭くしていた。申し訳ないことだった。

これまで大勢のサークルの後輩達に囲まれて、幸せな学生時代を生きてきた私にとっては、この東京での一歩は、とても寂しく感じられた。

閑散としたマンションの部屋に入った瞬間、後戻りしたい衝動が湧き起こった。

友人が帰るまでの時間は、何とも落ち着かない。勝手に人の部屋に入って友人の帰りを待っていたのだから。

夜遅い時間になると友人が仕事を終えてマンションに帰ってきた。私を歓迎するために買った「たい焼き」を手にして。

それからは夜が更けるまで、高校を卒業してからのお互いについて話した。彼は親のススメで入学した大学が合わなかったようで、大学をすでに中退していた。これからどうなるかもしれないフリーターだったわけである。

私も大学院に進学したとはいえ、猶予期間をもらっただけで、未来への保障など何もない。

実はお互いの不安を共有する形で、意気投合していたのかもしれない。ただ、当時は景気の良さもあり、このような若者は決して少なくはなかった。

この将来が固まり切れない不安というものを、今現在の日本では、かなり多くの人が共有しているのではないかと思う。もはやあの時代と今の日本は全く異なる。非正規雇用、子供の貧困、老後の困窮、ほとんどの人が、未来への不安を共有せざるを得ない状況なのである。

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投稿者:

山道 清和

日本の未来への発展と繁栄のために、日本の学生には自分から学び、考え、自分の意見を持つことのできる人材になって欲しいと心から願っています。就職や公務員試験に関する相談も受け付けています。遠慮なくどうぞ。

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