フリーター脱出と天職獲得への道
間奏曲―フリーターの時代―その35(最終回)
私は単にフリーターから抜け出しただけでなく、「天職」を得た。だから私の脱出のプロセスのなかには「天職」を得るために必要な要素も含まれていたのだと思う。
振り返ってみたい。
まず、フリーターとしてのアルバイトは基本的に何でもいい。自分のやりたいことに近いものでも、遠いものでもどちらでもいいのではないだろうか。むしろ仕事にこだわらずなんでもやってみるという姿勢はとても大切であるように思える。
そしてそのアルバイトが何であれ、一生懸命に働くこと。正社員と同じくらいに仕事をすること。正社員になったつもりで仕事をすること。これが非常に重要だと考える。
大方のフリーターは片手間、腰掛意識が強く、一生懸命に仕事をしていない。自分は別の仕事をする人間だと思っているからだ。
本当はそうではなく今やるべき仕事が、本当は一生懸命にやらなければならない仕事なのである。そのような気持ちで今目の前にある仕事をとらえられるかどうか、今の仕事の地続きの仕事の中にしか、次の仕事はないのだということ、これが重要である。
一生懸命に取り組んでいると自分の長所や短所が非常によく見えてくるので、次のステップに進んでいくための貴重な財産になるのである。
ここまでが第一段階だ。
フリーターを脱出するためにはどのような仕事であっても一生懸命に働き、正社員と同じ気持ちで働くことが大切だということを述べた。
そして、次は天職に出会うための大切な要件について考えてみたい。
天職に出会いたいならもうひとつ高度な努力が必要だろう。
アルバイトをしながらも、できるだけそれ以外の時間を勉強に当てること。
実際にはこのようなことをしている人が少ないことは言うまでもないことだ。これはフリーターであっても、正社員として働いている人であっても同様で、仕事以外の余暇や休日などを勉強に当てている人はさほど多くはない。
昨今は資格の取得などがブームになっているから、サラリーマンなどでも勉強している人を目にするが、長続きしない人がほとんどだ。
しかし、このささやかな努力を継続できるかどうか、天職が得られるかどうかはこの部分にかかっている。
今やっている仕事を一生懸命にやることで自分のやりたいこと、やりたくないこと、そして向いているかいないかなどが明確になってくる。
そして自分のやりたいことの分野に関することを少しずつ勉強していくわけである。
自分のやりたい仕事を手に入れるために。
その継続が一定期間続けられたら、パズルのピースがしかるべき場所にはまるように、あなたは自分の行くべき場所に吸い寄せられていくだろう。
これこそが、天職、召命(calling)だ。
このようなことを信じることができるだろうか。
日本は現在、経済的な停滞に見舞われている。この30年賃金は上がっていない。
もはや正社員になれればいいほうで、場合によってはフリーターになったり、派遣社員や契約社員など、自分としては不本意な進路の決定を余儀なくされている人も多いだろう。
ただ、ほとんどの人は自分の将来について明確なビジョンを持っていない、あるいは持ち得ないのではないかと思われる。しかし、フリーターを抜け出すには、自分が何をしたいのか、どのような方面で勝負していくのか、そのようなものを決めなければならない。
その場合、「明確さ」は力である。
目標や理想を実現させるためには、できるだけ「明確」な将来像をイメージできなければならない。
多くの人の場合、ほんの少しの時間はそのようなビジョンを描くことができても、それを継続させることができないものなのだ。
すぐにそのビジョンが変わってしまったり、崩れてしまったりする。
覚悟を決めて10年くらいは粘り強く、決してあきらめず、自分の明確な将来のイメージを持ち続けて欲しいと思うのである。
学生が終わって、すぐに自分のやりたい仕事や理想の仕事につくことは容易なことではない。しかし、それでもいい。人生は長いのだから、すぐに願望が実現しなくても、少しずつそれに近づくことを楽しめる、あるいは喜べるメンタリティーを持ちたいものだ。
努力のプロセスを幸せに感じられる人こそ、願望や理想の実現をなす資格があるといえるのではないだろうか。
フリーター時代の不安や苦労は、あなた自身の心の糧になるだろうし、世の中で苦しんだり悩んだりしている人たちを理解するための、貴重な経験となることだろう。
何でもとんとん拍子に進んだ人生を生きることが、人生の目的ではない。様々な経験や苦しみ、そして不安の中から、何を学び、自分をどう成長させたのか。フリーター時代の珠玉の経験を、大切にすることが必要なのである。それはすべてがあなたの資源となるからだ。
そして自分の最終目標に対して決して、決して、決してあきらめないことを強く勧めておきたい。
フリーターを脱出して、天職を得るという観点から述べてきたが、最近では雇用のあり方やライフスタイルが多様化してきている。これは不安定さを意味してはいるが、多くの人にとってチャンスともいえる。
大きな会社に就職することが幸せを保障するものではないし、人間にとって本当に幸せな仕事の仕方や生活のあり方について、自分自身で考えなければならなくなったということである。
アメリカではすでに「フリーエージェント」という雇われない生き方をする人が大勢いる。
誰かに雇われて、組織に属して生きていく、仕事をしていくというライフスタイルが崩れてきている。
そのような現状の中で、一体自分はどのような人生を生きていきたいのか、そして、仕事のスタイルや生活のスタイルについてどのような形態が幸せだと考えるのか、それを考えなければならない。
今後の日本や世界のあり方を考える時、会社組織に属して生きていくというライフスタイルが主流でなくなってくる可能性も高い。
この「雇われない生き方」について考えていかなければならない。
幸いにして、インターネットの普及によって、情報の発信が個人でもできるようになり、瞬時に世界につながることができる。
このようなあり方が、新しいライフスタイルを可能にしている。
フリーターは結局お金の不安から自由ではないし、そうかといって正社員も、どこかの組織に自分の労働を提供してお金を稼いでいると言う意味では非常に不自由な存在だ。
これからの時代は本当の意味での「フリー」について考えてみる必要があるだろう。
しかし、自由への道は、やはり様々な情報や学び、そして何よりも、強い行動力にかかっているということを決して忘れてはならないのである。
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