ゼミで鍛えられる

ゼミで鍛えられる


ゼミの勉強はなかなか厳しかった。最初は栗本慎一郎の「意味と生命」(青土社)という本を読んで、内容を吟味していった。内容はもはや「法社会学」ではない。

ただ加藤先生は本来は、「イギリスの慣習法」などの研究をしておられて、その分野の論文なども私に読ませてくださった(加藤哲実先生の本は「法社会学」や「法の社会史」などもある)。

ゼミのやり方は色んな本を題材にして私がその本を読み内容を説明、教授がそれについて質問を繰り返す。

あいまいな説明をすると突っ込まれる。

これが毎週続く。

だがこのゼミでの研究や発表(といっても発表者は私だけなのだが)は非常に自分の能力の向上に役に立った。先生の突っ込みに答えるために、頭を使い、自分の貧困な語彙力の中から言葉をひねり出し、さらに貧困な経験から具体例を見つける)。

説明能力を身につけることができたのはこのゼミでの発表のおかげだ。

書物の中に書いてある抽象的なことを具体的に話して相手を納得させる。しかも論理的でなければすぐに厳しい突っ込みが入る。

私はこのゼミでの経験のおかげで、頭がいいということはどういうことなのかわかった気がした。私は全く不十分ではあったし、今でも自信があるわけではないが。

頭の良さとは結局、「他人に伝える能力」と不可分であるということ。

私は抽象的なことを具体的に説明する力をここで身につけることができたと思う。しかもその能力は社会に出てもあらゆるところで役に立つのである。

このゼミでは実に様々な分野の本を読んだ。ゼミは「法社会学」だったが、加藤先生と私だけだったので本当にどんな分野もありだった(確か最後は「知覚の現象学」メルロ=ポンティを読んでいた)。

その意味で本当に楽しく、この上ない贅沢な時間だったと思う。

私1人を相手に真剣に付き合ってくださった加藤先生には今でも感謝の気持ちでいっぱいだ。

そしてこの加藤先生が私の人生の進路を大きく変える存在になったのである。

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投稿者:

山道 清和

日本の未来への発展と繁栄のために、日本の学生には自分から学び、考え、自分の意見を持つことのできる人材になって欲しいと心から願っています。就職や公務員試験に関する相談も受け付けています。遠慮なくどうぞ。

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