「食で医療費は10兆円減らせる」 渡邊 昌

「食で医療費は10兆円減らせる」 渡邊 昌


「食」で医療費は10兆円減らせる

この著者は自身の糖尿病を、食事と運動によって完治させた経験から、今の医療のありかたの根本的な方向転換を提唱している。「統合医療」と呼ばれるその方向性は、従来人間の「体」だけしか見てこなかった医療に対して「食」と「心」を含めた人間全体を見ようとする。このような医療が医療の中心になってくれば、当然にもっと健康な人が増え、医療費などは大幅に削減できることだろう。

このような医療の在り方はしかし、ずいぶん前から提唱されてはいた。ホリスティック医学などもそうだろう。私は以前(もう30年前)に東京の虎ノ門病院で看護助手をしていたことがある。その病棟や図書館には、医学雑誌などがおいてあり、時間を見つけては読んでいたものだ。そこで出会ったのがホリスティック医学。これも人間を分析的な要素還元主義でみていくのではなく、全体として見ていく医療であることは間違いない。ホリスティック医学の理念は素晴らしいものであり、当時の私を引き付けた。

それからもう30年もの歳月がたっているのに、日本の医療の現状はどうだろうか。全くこのような全体観や人間全体を対象とする医療は盛んになっていない。人間の自然治癒力などを含めた医療がメジャーになってしまうと困る人間が医療の世界には山ほどいるからだ。

わたしももう10年以上は医者に行っていないが、このように医者を不要とする健康な人間が増えてしまうと、医者の仕事は少なくなり、儲からない。せっかく多額のお金をかけて医学部に行き医者になったのに、金儲けができず、普通のサラリーマンなどと同じような収入になることに耐えられない人も多いだろう。医者は健康な人が増えると困る職業なのである。そのような理由もあり、極力薬を減らし、医者の力を借りない医療の在り方などあってはならないわけである。

また、製薬会社などの医学系の企業(特に多国籍グローバル企業)などは、人間が薬を使わずに健康になってしまっては自分たちの存在意義も経済的利益も失うことになる。このような大きな資本がマスコミも含めた色々なところを通じて、このような統合医療やホリスティック医療がメジャーにならないように働きかけているのだろうと思う。そもそも医療費が日本の予算の4割にもなっている現状なのに、これを根本的に削減しようという提案や政策が本気で議論されないのは何故なのか。医療費の削減を本気でやるなら、医者や薬を必要としない医療の在り方を広げ、そこに予算を投入すべきだろう。

また、私たちも、医療を過信し、医者に頼り、目先の症状がなくなることに助けを求め、それによって医者や薬に頼り過ぎている現状もある。患者自身が根本治療を欲しておらず、自分の中に治癒する力があることを信じず、人生観や生活を根本的に改めななければ、現状からは逃れられない。心ある医者も、患者が薬を欲すれば、必要ないと思いつつ、出してあげることもあるのかもしれない。

いずれにしてもこの統合医療やホリスティック医学が大きな勢力にならないことは日本にとってもわれわれ国民にとっても不幸なことである。日本食は健康にとてもいいし、実際にそれは立証されているのに、日本人は自らそれを放棄してきたかに見える。

この著者の言うように、「食」を日本食中心にして、地産地消で日本の食材を使った食事を心がける。時々、洋食や中華もいいし、色々な国の料理を楽しむのもいいだろう。ただ、「食」で健康になるのだと決めて、それを実践すれば、間違いなくこの日本はもっと健康な国になるだろう。外国の企業が作ったワクチンなどに多額の予算を使っている場合ではないのである。そのような意味でも日本は日本を見失っているといえる。

統合医療の考え方は、死生観や人生観をも変える力がある。多くの医学生や看護、薬剤などに関わる若者が、お金や収入に左右されず、このようなチャレンジングな分野に進んで働いてくれることを願っている。

私が30年前に出会ったホリスティック医学は、これだけの歳月を経ても医療の世界で中心にはなっていない。相当な厚い壁があることは容易に想像できる(手術や薬がないと儲からない)。西洋医学に一定の効果や貢献があったことは認めるが、そのような知見をさらに超えた医療の在り方こそが必要になってきているのだ。

私が大学院で学んでいたころ、現代思想が流行していて、アーサー・ケストラの「ホロン革命」などが読まれていた。西洋の科学、要素還元主義的な思考を変える思想はこの時代にすでに多数出ていたのだが、それが社会の必要な分野に十分に受け入れられなかったことは非常に残念なことだ(おそらく多くの人にとって怪しいものだったのだろう)。いまだに医療の世界は人間の体、しかも患部だけを見て治療や手術などを行っている。西洋医学の負の部分を全く超えることができていないのが現状であり、本当に残念に思う。

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日本統合医学協会

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投稿者:

山道 清和

日本の未来への発展と繁栄のために、日本の学生には自分から学び、考え、自分の意見を持つことのできる人材になって欲しいと心から願っています。就職や公務員試験に関する相談も受け付けています。遠慮なくどうぞ。

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