「最貧困女子」 鈴木大介
日本では、この30年間所得は上がらず、また非正規雇用の増大で経済的に貧困層が増えているというのは事実である。それに加えて、コロナの影響もありますますその状況に拍車がかかった。
このような中で、貧困状態にある女性を取材して、その実態をルポしたのがこの著書である。内容についてはここでは詳細には触れない。
あまりにも残酷な現実が書かれていて、論評するような気にもならなければその資格もないと思っている。
ただ、日本人がもはや世界の一等国ではなくなり、安い国になっていることは確かであり、この最貧困の女性たちも、この安い日本でさらに安い人間にならざるを得ない苦境に立たされているわけである。
このような現状が見えにくく、一般の人には知りえない世界となっていることもまた大きな問題である。
ただこれには、そのような女性たちが助けを求めない、求めるすべを知らない、制度も利用できないなども含めて、完全な孤立状態になっていることも大きな原因であり、様々な縁を失って生きる人間が、どんな生活を送ってしまうことになるのかがよくわかる。
例えば、同じ貧困でも幸せな女性もいる。それは地方などで多くの友人や家族と共に暮らし、助け合って生きていける人たちである。人間は信頼できる人に囲まれていれば、お金がなくとも幸せに生きられるという実例を、彼女たちは示している。
貧困に対しては、国家として社会として、対策を講じる必要があるが、本当に必要なことは気兼ねなく助けを求められる友人や周囲の人との関係、そして信頼できる公的な支援だろう。
人間と人間のつながりは、多くの人を救う力がある。孤立はやはり「病」である。いかにしてこのつながりを、作っていけるのか。経済政策や社会政策とは別の観点から考えさせてくれる本である。
(BOOK OFFにてクーポン利用で10円で購入)
Share this content:
コメントを残す